性犯罪の裁判員裁判
弁護士石井琢磨です。

2月下旬から日中に事務所を不在にする日々が続いていました。

裁判員裁判があったためです。

この判決が出ました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130308-00000001-kana-l14


事件は、強姦致傷のほか強姦等性犯罪3件、住居侵入窃盗等。
示談・被害弁償は残念ながら一切できず。
謝罪文もほとんどの事件で受け取り拒否。

検察官の求刑が懲役22年
被害者参加人の意見は、できるだけ長い刑

弁護側の求刑が懲役9年程度



判決は、懲役13年
でした。



裁判員裁判が始まる前は、求刑の8割程度が相場と言われていたことがあります。
22年の8割だと17年半程度
裁判員裁判が始まり、性犯罪事件の量刑は重くなったとの報道をよく見かけました。
求刑どおりの判決や求刑を上回る判決を報道で見ることもあります。
実際に私も被告人の逮捕直後からそのように厳しい見通しを伝えていました。

検察側の求刑を基準にしてしまうのは危険な発想ではありますが、
求刑に引っ張られるという現実を前提にすると

求刑の6割を下回る判決は、被告人にとっては有利な判断でした。

私たちは被告人の弁護ですので、ちょっとほっとしています。



なぜ、このような判決がなされたのでしょうか。

おそらく市民から選ばれた裁判員が、被告人が更生すると信じてくれたからです。

報道記事では被害者の処罰感情を指摘しつつ、

一方で、「性犯罪の常習性はさほど根深くなく、反省の念を深めつつある」として再犯可能性は相当低下していると判断。「今後の教育次第で十分更生が期待できる」として情状を酌量した


と記載されています。

裁判員の意見が反映されたものと思います。

今回の裁判員は、全員が被告人に対して、質問をしていました。
その中には、鋭い質問、被告人にとって有利なエピソードを引き出す質問もありました。

私たち弁護側が事前にそこに気づけよ、という話ではありますが、接見室で延々と質問を続けたときと、公開法廷でバーッと目の前に並ぶ裁判官・裁判員から質問されたときとでは、答える側の脳の使い方が違うようです。
法廷でだけ入るスイッチがあるのですよ、たぶん。

同じ内容の質問なのに、事前の打ち合わせでは出てこなかった言葉が引き出されていました。

裁判員に選ばれた方は、なかなか質問しにくいと思います。
私が法律関係者じゃなくて、裁判員に選ばれてしまったら、質問も発言もできないと思います。

しかし、今回の6名の方は、積極的に質問をしてくれていました。
裁判員に選ばれた6人の中に、積極的に質問をしていく人がいると、他の裁判員も質問しやすくなるようです。

裁判長の最後の質問の後にまで、追加で質問をしている方もいました。

事件内容の質問以外にも、被告人がなぜ事件を起こしてしまったのか、今後、どういう点に気をつければ良いのか、という点を突っ込む質問もありました。質問というより助言に近い指摘も。


人間は受ける言葉で変わります。

裁判員裁判の数日間で、彼も新しい視点を手に入れたようでした。
私が9カ月間、言い続けてきても辿りつけなかった視点に数日間で・・・


しっかり質問をしてくれた裁判員のみなさんの勇気には感謝したいと思います。


私の担当パートである最終弁論では、裁判員のみなさんの質問を有効に使おう、という気持ちで裁判員の方が引き出した情報を積極的に含めました。

今回の最終弁論では、法廷に備え付けられたスクリーンを利用して簡単な項目のみパワーポイントで表示しました。
その理由のうち3割くらいは、被告人のため

もちろん、弁論は、結論を決める裁判官・裁判員に向けておこなうものです。
ただ、今回の裁判では、裁判員の質問の中に、被告人に対するアドバイス的なものが多かったので、その情報を所々に織り交ぜて、被告人にまとめて伝えるという効果を狙いました。

被告人も、弁論を耳からだけで聞くのと、目からも一定の情報が入るのでは、脳への刺激が多少は違うだろうと。
10年後に、この弁論の一部でも彼の中に残っていてくれたら良いのです。


市民がこれだけ集まってこれだけの時間を使ったのだから、しっかり更生してほしい。

裁判員の言葉が、今後の彼の人生に少しでも残ってくれることを願います。


判決後、彼と最後の面会をしてきました。
逮捕後から読書を始めたという話でしたので、「本は人生を変える!」と熱く語ってしまいました。
「小説で活字に慣れたら、ビジネス書を年間300冊読め、そして出所後、その知識を仕事に活かせ!」とアドバイスをしておきました。

餞別に熱い小説を差し入れておきました。
風が強く吹いている (新潮文庫)
風が強く吹いている (新潮文庫)




みなさんも裁判員に選ばれた際には、おそれずに質問、発言するようにしてくださいね。
それが誰かの人生に良い影響を与えることもあるのです。


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2013/03/08(Fri) | 刑事事件 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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