別れさせ屋が依頼者から訴えられた件
弁護士石井琢磨です。


依頼者が、別れさせ屋に対して提訴したというニュースが話題になっています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130214-00000045-asahi-soci
引用してみます。


 「別れさせ屋」は、依頼を受けて交際相手がいる人に異性を近づかせるなどして、「破局」をうながす。訴状によると、女性は2006年12月、交際していた男性の浮気を知り、「別れさせ屋」をうたう調査会社に浮気解消を依頼した。80万円を支払ったが、ほとんど仕事はされず、浮気も解消しなかったという。
 女性は、「別れさせ屋」は他人の恋愛感情に不当に干渉し公序良俗に反しているので、自分が依頼した契約は無効だと主張。消費者金融で借りた80万円に金利が加わり、実際に支払った107万円を賠償するよう求めている。




別れさせ屋は過去に刑事事件も起きて有名になりました。
インターネットで検索して出てくる会社を見ると、費用は、着手金として一定額を受け取り、成功報酬が別途発生するタイプが多いようです。
さらに、工作期間の長さによって、これらの金額が異なることがほとんど。

今回は、着手金のように、先に払った費用分の請求です。

着手金を受け取る契約をしている場合には、他人事ではありません。


報道の「ほとんど仕事はされず」という点を置いておくと、問題点は大きく2つ。
1 別れさせ屋との間の契約は、公序良俗違反で無効か。
2 契約が無効だとして損害賠償請求が可能か。



1の契約が無効だと認められたとしても、2の請求が可能かどうかについては、不法原因給付の問題になりそうです。
構造としては、過去に裏口入学として支払ったお金の請求で説明しましたので、気になる方は読んでみてください。
参考記事:残酷な裏口入学裁判で取り返すたったひとつの方法


契約が公序良俗違反で無効になっても、払ったお金を取り戻せるかどうかは別。
不法原因給付の規定は、不法行為による損害賠償請求にも類推適用されますので、この問題は避けられないでしょう。


この2番の問題に行く前に、そもそも
1 別れさせ屋との間の契約は、公序良俗違反で無効か。」という点が問題になります。
調査会社も、この点を争っているようです。

別れさせ屋は、報道記事によると、
依頼を受けて交際相手がいる人に異性を近づかせるなどして、「破局」をうながす。
と説明されています。

個人的に、人間不信社会に向かっていくこのようなビジネスはよろしくないと思いますが、公序良俗違反で無効かどうかは別問題。


民法90条
「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。 」

公序良俗ってなんでしょう?

法律の解説書では、社会的妥当性があるかどうか、といわれます。


男女関係と公序良俗が問題にされるのは、愛人契約が多いです。

「愛人でいることを条件に毎月●円払う」という契約は無効。
一夫一婦制に反する関係を維持する契約は無効とされています。

これに対して、

「婚姻外の情交関係をやめることを内容とする契約は有効とされる。
ただし、判例はこのような関係をやめるについて、一方が他方に金銭(手切れ金)を与える契約は、それが「金銭的利益を得て私通関係をやめる」という意味を有する場合には善良の風俗に反するが(大判大正12.12.12民集2巻668頁)、それが将来私通関係をやめることを互いに決意した際、相手方の精神上の苦痛を慰謝する目的で金銭の贈与を約束するという意味を有するのであれば、公序良俗に反するものではないとする
(大判昭和12.4.20新聞4133号)。

「民法コンメンタール 199頁より引用」
我妻・有泉コンメンタール民法―総則・物権・債権
我妻・有泉コンメンタール民法―総則・物権・債権我妻 榮 清水 誠 田山 輝明 有泉 亨

日本評論社 2010-07
売り上げランキング : 198138


Amazonで詳しく見る
by G-Tools




愛人と別れる方向の契約は公序良俗違反にならない可能性が高いと説明されています。

報道によれば、今回の事件の依頼者は、結婚していないようです。
交際相手の浮気を止めたかった様子。

本来、未婚者同士の恋愛は自由。

未婚者の交際関係を別れさせるよう「うながす」ことは、社会的に妥当なのかどうか。


裁判官がこれを判断する際に、「別れさせる契約」とはどういう契約だったのか特定されるはずです。

破局をうながすために、調査会社側が何をどのようにする、という契約だったのか。
ここに違法行為が入っていると、契約が無効になる確率が高まるでしょう。

このような契約内容を詰めたうえで社会的に妥当かどうかを裁判官が決める。
裁判官の男女観が問われます。

私が裁判官だったら、精一杯和解勧告すると思います。
判決で別れさせる契約の実態が明らかになると社会的には有益ですね。


契約内容がグレーなビジネスをしている方は、どのような判断がされるか引き続き注目しておきましょう。



ご相談は相模川法律事務所ホームページへ

弁護士石井琢磨twitter

ランキング参加中です→人気blogランキングへ

関連記事
2013/02/18(Mon) | news | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
コメント
コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
→http://sagamigawa.blog73.fc2.com/tb.php/663-154de677
前のページ ホームに戻る  次のページ