弁護士業務マニュアルより記録の電子化の注意点
第4版 弁護士業務マニュアル-近代的な経営と業務改善のために-


弁護士石井琢磨です。

『弁護士業務マニュアル 第4版』を読みました。
タイトルのとおり、弁護士の業務を進めるやり方について幅広く書かれた本。
少しでも業務の進め方が改善できたり、効率化のためのアイデアをもらえたりすれば良いと思い、版を重ねるたびに読んでいます。

今回の第4版で印象的だったのは、事件記録のスキャン・電子化について結構触れられていたことです。
法律事務所以外でも紙がたくさんある業界では参考になる内容かもしれません。


裁判実務は紙媒体で動いていることから、法律事務所にも紙の事件記録がたくさん溜まります。
すべての事件記録を紙媒体で保管しつづけるにはコストがかかります。
多くの弁護士がこの悩みを抱えているなかで、スキャンツールが発達したため、事件記録の電子化が可能となりました。

しかし、記録の電子化には気をつけるべきポイントがあり、本書でも紹介されています。


1 スキャン代行業者、自炊業者は使わない


紙媒体を電子化する際に、代行業者を使うことが考えられます。
代行が合法なのかは議論がありますが、紙の本を電子化する際に、これらの業者を使う人もいるでしょう。

弁護士の事件記録も代行業者に外注すればラクできます。

しかし、本書では、代行業者を使うことは、弁護士の秘密保持義務違反になりうるとしています。

終了事件記録の処分の際に廃棄業者を使うことはありますが、これとは異なります。スキャン代行業者の場合には、中身を確認せずに廃棄するのではなく、中身を確認して電子化するわけです。
その作業のなかで、事件記録の中身を見ることになります。
法律事務所の外の人間に対して、記録を見せることは秘密保持義務違反になるという考え方です。

これに対し、代行業者と弁護士の間で秘密保持契約を結べば良いではないかという考えが出てきます。
しかし、本書ではこれも、依頼者や関係者の想定するところではないからダメだとしています。

結局、代行業者に外注するには、依頼者の明示の承諾が必要、それがあっても関係者の秘密にも配慮しなければならない、というのが結論です。

事件記録を電子化するには、事務所内で作業するしかないようです。

たしかに、殺人事件の記録とか、わいせつ系の刑事事件の記録など、外部の人間にはもちろん、事務所内のスタッフにすら見せられないと感じる事件記録は多いです。線引きが難しいことから、電子化する際にも代行業者は使えないという結論には納得です。



2 紙の記録も作らざるをえない

事件記録の電子化を考える際には、フローとストックに分けましょう。

終了事件のストックと、動いている事件のフローという意味です。

終了した事件記録は、ほとんど持ち歩くことがない、大部分の記録は使わない。
そのためまとめて電子化し、紙の記録は廃棄するということが考えられます。
私も紙の記録の保管場所が足りなくなってきたことから、少しずつ電子化しています。

問題は動いている事件のフローの方です。

動いている事件記録もすべて電子化してしまえば、ペーパーレス事務所となれそうです。
しかし、本書では、それは無理だろうと述べられています。

裁判記録や分量が多い事件記録では、一覧性が必要であるところ、電子データよりも紙の方が一覧性があるだろうというのが理由。
ただし、フローの方でも、検索や引用などの点で電子化しておくメリットはあるだろうとのことです。

一覧性の問題は、ファイルの管理方式や閲覧するツールによって、近いうちに改善するとは思います。
ただ、確かにまだ紙の方が一覧性があるとは感じます。

先日、刑事事件の判決日がありました。私は、複数の裁判所を回るスケジュールだったので、荷物を軽くするために刑事事件の記録については記録のうち2割程度を持って行き、他の部分は電子化したデータをPCとiPadに入れて持って行きました。

刑事事件の判決日は、普通は聞いているだけなので、記録は使いません。

しかし、今回の事件では、検察官からの追加立証があり、急遽予定されていなかった争点について調べられることになりました。
そのなかで「甲○号証の証拠では・・・」という話が法廷でされ、
甲○号証の書面をPCとiPadで急いで探しましたが、明らかに紙よりも時間がかかりました。

紙の一覧性の強さを実感した話です。




3 持ち歩きに注意


本書では、フロー事件記録を電子化したデータの持ち歩き方法について警告しています。
USBメモリなどの外部媒体を使う場合にはパスワードをかけるのは当然、管理にも気をつけること。
クラウドにデータをおいた方が安全ではないか、という結論です。

Dropboxなどのデータをネット上において閲覧できるクラウドツールを使う、という趣旨でしょう。

私は、クラウドツールはいくつか使っていますが、いまだに事件記録を置いたことはありません。
何となくパスワードをかけたUSBメモリより、クラウドデータの方が内容が漏れるリスクが高い気がするという印象と、
もっとも移動が多い小田原の裁判所への移動中、イーモバイルの電波が非常に弱い地域があるためです。

電波がつながらない、モバイル端末のバッテリー切れという呪縛から逃れられていません。

この問題も、ツールやインフラが発展していけば、クラウドに移行しそうな気もします。


このように気をつけるべきポイントはありますが、うまく電子化に移行できれば、紙媒体の保管コストが下げられます。
いまでは、事件記録の電子化を売りにした法律事務所もあるようです(売りになるのか?)。

電子化を検討している方は、ぜひ読んでみてください。


第4版 弁護士業務マニュアル-近代的な経営と業務改善のために-
第4版 弁護士業務マニュアル-近代的な経営と業務改善のために-東京弁護士会

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