偽名の健康保険証
弁護士石井琢磨です。

先日、約2年の付き合いがある友人と飲んでいる際に、
「実は、私は弁護士じゃないかもしれないですよ」
と言ってみました。

自分が弁護士であるとして名刺交換をし、相手はそれを信用し、それ以来、ずっと私が弁護士であることを前提にしています。
当然、私も相手の肩書きを信用している。
しかし、これは怖いことでもあります。

弁護士かどうかは、日弁連のサイトで検索をすれば、登録が確認できます。
ただし、そこで確認できるのは、「石井琢磨=弁護士」であるところまで。
「目の前の人物=石井琢磨」の確認はできない(日弁連サイトに写真を登録していなければ)。

目の前の人物は偽物かもしれません。

こんな話題を出すのは、新年早々、いろいろありすぎて、精神が崩壊しているからではありません。


偽名の健康保険証を入手し、何年も生活を続けている人の報道を見たからです。
報道によると、この人は、偽名の履歴書で就職し、就職先を通じて健康保険協会から偽名の健康保険証を取得。この保険証で、携帯電話や銀行口座の契約もしていたそう。
いまは、当時よりも、銀行や携帯電話会社も身分証明書の偽造について警戒していると思います。
写真がない保険証は偽造されやすいと言われ、多くの協会では偽造しにくいタイプのものに変更もされています。しかし、保険証が身分証明書として重視されているのは事実。大元の発行自体が緩やかにされている場合には、どうしようもない。

就職先の会社が履歴書だけで信じるなんて甘いのではないか、という意見があるかもしれません。しかし、私自身、健康保険とは関係ありませんが、個人事業主として何人もの弁護士・スタッフに働いてもらっているところ、履歴書以外に免許証の写しを求めたりしていません。これが雇用現場の実情ではないでしょうか。

健康保険証が意外に簡単に発行できる話は以前からされていましたが、ここまで新聞等で報道されるのは珍しいと思います。
悪用される前に対策をとってほしいもの。

何しろ、偽名で健康保険証が作れるということは、報道されたように携帯電話・銀行預金口座が作れるということにつながります。


まったく減らない振り込め詐欺には、使い捨ての携帯電話と銀行口座(か現金を受領する捨て駒となる人物)が必要。

これらは裏で安く売買されています。
お金に困り名義を貸して詐欺罪で処分される人もいます。

私が以前に国選弁護で担当した事件では、
お金が欲しい→銀行口座や携帯電話を売ろう
→口座や携帯電話を手に入れるため、身分証として免許証を偽造。
→免許証の偽造には、都道府県ごとの見本が必要だ。
→都道府県ごとの見本を手に入れるために出張して免許証をひったくり。

このように当初のお金が欲しいという目的からかけ離れ過ぎているんじゃないか、というロジックでひったくりをして怪我をさせ強盗致傷罪成立。

とても高くついた事件でした。

このケースでも、身分証明書として偽名の健康保険証を入手できたなら、出張してひったくりまでしなかったでしょう。


今回の報道の話だと、健康保険証を申請する会社側の審査が甘い(もしくは、共謀している)と、存在しない人の健康保険証、携帯電話、銀行口座が大量にできてしまうことになりそうです。

では、会社、たとえば株式会社を作る際にどのような書類が必要なのでしょうか?

公的機関が発行した書類で必要なものとして、代表取締役の印鑑証明書があります。

私が10年前に担当した事件では、印鑑証明書を家族以外の第三者に不正取得されて、不動産登記を移転させられていました。

会社という法人は、もともと抽象的な存在。
違法ではありますが、会社が法的にも存在しないのに、「株式会社」という名刺が配られているシーンは悪質商法の現場ではよくあります。
さらに、法的に会社は存在していても、上記の手順を踏んだ場合、実態がなく、足も付きにくい会社の可能性もあります。偽造や不正入手した印鑑証明書をもとに作成されている可能性も否定できません。

そのような会社を作ることができれば、今回のような健康保険証を大量に作られてしまう危険があるのです。

健康保険証の発行体は、これ以上問題が悪化しないうちに不正取得の危険性を減らす仕組みを作った方が良いとともに、われわれは、目の前の人(法人も個人も)がずっといるとは考えない方が良いと思います。



関連記事
2012/01/19(Thu) | news | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
コメント
コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
→http://sagamigawa.blog73.fc2.com/tb.php/565-201a79d8
前のページ ホームに戻る  次のページ