残酷な裏口入学裁判で取り返すたったひとつの方法
弁護士の石井です。

先日、裏口入園の話をもちかけ3500万円を騙し取った事件が報道されました。

入園とは、幼稚園に入ること。
幼稚園に裏口入園させるために3500万円もの金額を準備したことがネット上で騒がれています。


今回のように、裏口入学や裏口入園でお金を騙し取られる、という話は昔からあります。
なくなりません。

なぜか。

法律と裁判所の対応がぬるいからです。


裏口入学について過去の裁判例を見ていきますと、
裁判所は、裏口入学を頼んだ側に対しても、厳しい判決をバシバシ出しています。

過去の裁判では、親から「合格しなかったんだから裏口入学の費用として渡したお金を返せ」と請求されるものが多いです。
しかし、裁判所は厳しい。

裁判所の考えはこう。

裏口入学図1







東京地裁昭和62年8月28日判決
「 一般に門戸を開いた競争試験による大学入学について、入学希望者に有利な取計らいを得るため、大学関係者に金品を提供して便宜を図るよう依頼する行為は、醜悪で、杜会の秩序及び善良な風俗を害する」

だからお金は返さなくていい。

大阪高裁平成2年3月9日判決
「いわゆる裏口入学は、正規の手続によらず不正義、不公正な方法によって入学を実現しようとするもので、・・・公正な入学試験が行われることを信じて勉学に励む多くの受験生やその関係者に対する背信的行為でもあり、社会全般にとっても到底許容することができず、厳しい社会的非難を免れないものであって、公序良俗に反することが明らかである」

だからお金は返さなくていい。


東京高裁平成6年3月15日判決
「裏口入学工作の斡旋を依頼し金員を控訴人に交付した行為は極めて反社会性が強く、反道徳的で公序良俗に反するものである」

だからお金は返さなくていい。


東京地裁平成19年1月23日判決
「結局,一般の入学試験の成績とは別に,何者かに金銭の提供等の利益を供与することによって,正規の手続以外の方法により合格の結果を得ようとするものというほかなく,これを,裏口入学と称するかはともかく,また,それが私立学校に対する入学手続に関するものであることを考慮しても,社会通念上,そのような依頼が公序良俗に反するものであることは明らかというべきである。」


だからお金は返さなくていい。




このような裁判例のなかには、お金を受け取った行為は「詐欺」だと断言しているものもあります。
それなのに、お金は返さなくていいという判断です
中には騙した側が裁判を無視して何も反論していないのに、訴えを認めない裁判例もあります。
詐欺師が利益を得て許されるという話。


このような結果になっているのは、民法708条が原因です。

民法708条本文「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。」

この不法原因給付、と呼ばれる制度は、賭け事で説明されることが多いです。


賭け事をして、負けた人が勝った人にお金を払う。
その後で、払った人は「賭け事ってさー、違法だよね。だからさ、渡したお金を返してよ」と言い出します。
でも、法律は、賭け事自体が違法なので、「違法なことをした人を何で助けなきゃいけないの」という態度で、
払ったお金は返してもらえないのです。

裏口入学図2






裏口入学で、多くの裁判例が、払ったお金を取り返せないとしているのは、この理論です。

裏口入学図3





この民法708条には例外があります。
「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。

「みんな悪いことをした」

けど

「その原因って、お金を受け取った人にあるよね?」

という場合には、例外として、お金を返せ、と言えるのです。


お金を受け取った人が一方的に悪い場合に、払った人が返してもらえないとすると、どうなるでしょうか?

悪いことが流行りますよね。
だから、例外が認められるのです。

さらに、この例外規定は
払った側も悪いとしても、受け取った側の方が極めて悪い、場合にも認められるのです。


裏口入学で騙し取られたお金を取り返すためには、このポイントを突くことになります。
残酷な裁判で取り返すたったひとつの方法
と言えるでしょう。


目指すのは、お金を受け取った側が極めて悪い、と裁判所に認めてもらうことです。


裏口入学図4





うえに挙げた裁判例のなかでも、受け取った側が悪い、と主張しているのですが、なかなか認められていません。

そのなかで、裏口入学のお金を返しなさいと認めた裁判例。

東京地裁平成16年12月21日
「専門学校に入学するには入学試験の成績がよくても必ず300万円を支払わなければならないと誤信して,その結果被告に300万円を預託したものであり,300万円の性質を専門学校の学納金の一部としての寄付金のようなものと思っていたものと推認できるから,これを民法708条にいう不法な原因による給付であるということはできない。」

裏口入学のお金の認識、という部分で争った例です。



もうひとつ、裏口入学のお金を返しなさいと認めた裁判例。

東京地裁平成20年5月27日判決
「不法原因給付に係るものであっても,当事者間において任意に返還をして不法原因による給付状態を解消することを否定するものではなく,また,本件合意は,Aを紹介した被告Y1及び被告Y2が,原告との間の紛争解決のためにしたものと解される上,前提事実(11)及び証拠(甲3ないし6)によれば,被告らは弁護士を依頼して原告との交渉をしているのであるから,本件合意は被告らの任意に基づくものであると認めることができる。
   そうすると,本件合意が直ちに公序良俗に反し無効のものということはできない。」

つまり、お金をやりとりした後に、もめて、「お金を返します」という合意書面を作ったのに払わないのはダメと言っている例です。



この2つの理論
渡したお金の認識
書面をつくった(返すという合意があった)
という点で、争っている裁判は他にもあります。

それでも
お金は返さなくていい

とされてしまっている裁判例もあります。



やはり、最も重要な点は

お金を受け取った側が極めて悪い、と裁判所に認めてもらうこと。

この根本的なところに、理論的な説明(認識とか書面とか)を組み合わせて闘うこと


今回の記事で紹介した裁判例は、昔のものもあり、その時代には、頼む親から「裏口入学お願いします」と積極的に言っているような印象を受けます。
それに対して、最近では、塾、予備校、コンサルタントなどから、親に対して「裏口入学できますよ」と積極的に勧誘し騙し取るような例が多い印象を受けます。

まさに、騙している側が悪い、という事案が多くなってきているのです。


最高裁が、ヤミ金融に利益を与えない
とハッキリ言ったように、
裏口入学詐欺にも利益を与えない
という時代がくることを願います。


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2011/07/06(Wed) | 消費者問題 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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