弁護士の石井です。
養子縁組の偽装のお話。
養子縁組は、以前から悪用される例が後を絶たず、問題視されていました。
最近、また話題になってきましたね。
実際には養子になる気がないのに届出を出して養子を装う問題です。
養子縁組には、普通と特別の2種類があります。
特別養子縁組は親子の結びつきが強い縁組。家裁の手続が必要など要件も厳しいため、普通養子縁組のように悪用される例は多くありません。
養子縁組のうち、普通の養子縁組のほうは、市町村に届出をするだけで成立します。
多少の要件はありますが、二人の同意があれば成立するもの。
悪用されるのはカンタンにできる普通養子縁組のほうです。
この養子縁組はなぜ悪用されてしまうのでしょうか?
養子縁組が悪用されるのは、戸籍上の名字が変わることで、別人を装えちゃうからです。別人のフリができれば、借金をするほか、銀行口座を開設したり、ケータイをつくったりできますね。
そして、それらは売れる。その後、詐欺に使われる、という流れです。
実際に、偽装縁組で刑事裁判になっているケースでは、詐欺や文書偽造などとセットにされていることが多いのです。
このように戸籍を使うことで、現金を手に入れることができてしまうのが悪用される原因。
偽装縁組は、自分の意思でする場合のほか、騙されてしたり、ひどい時には無断で養子縁組をされてしてしまう例もあります。
身分証明書を紛失したら、勝手に縁組されたというニュースもありました。
私が相談を受けたケースでは、「先輩から言われて10人以上と養子縁組をしてしまっている」という方もいました。
このように悪用されまくっていた養子縁組。
そのため、なんとかしなきゃいけない、ということで、市町村に出された届出が不審な場合には、法務局に照会が行き、すぐには受理しない扱いがされることになりました。
http://www.asahi.com/national/update/0108/TKY201101080156.html
これによって、何人もと連続して養子縁組をするというケースは少なくなるかもしれません。
それでも、この網を抜ければ、まだまだ悪用されてしまいます。
このように悪用される養子縁組の偽装にはリスクが3つあります。
1番目は刑事リスク。
本当には養子縁組をする意思がないのに、縁組の届出を出すことは犯罪です。
公正証書原本不実記載、同行使(または電磁的)になります。
これは年間1100~1200件程度検挙されている犯罪。
もちろん、詐欺や文書偽造もからむとドンドン重くなります。
2番目が相続リスク。
戸籍という形式上は、親子関係が生じてしまっているため、
相続
が発生します。
養子縁組を繰り返して戸籍上10人の親がいる形になっていると
その形式上の親が借金を残して死亡した場合
10人分の借金の請求が来ます。
もちろん、請求が来た時点で、養子縁組の無効確認請求をしたり、相続放棄という手続でこのリスクは避けられますが、手間ですよね。
手に入れたわずかなお金よりも遙かに面倒なリスクが待っているはずです。
3番目が扶養リスク。
さらには、形式上は親子ですので、
「養ってくれよ~」と親から請求されることもあるかもしれません。
自分が無効な縁組だと争っても、相手が「いやいや、私たち親子だよね?」と言い始めたら、これまた面倒です。
これらのリスクがあるため、無効になるような偽装養子縁組はしないに越したことはありません。
養子縁組が偽装だとして無効とされるかどうか、多くは、養子縁組の意思があるかどうかにかかってきます。
じつは、この養子縁組は、悪用されるケースのほか、便宜的に使われてきた実績があります。
養子が多いと相続税が安くなる時代には、節税のために多くの養子縁組がされました。
また、刑務所の面会のために養子縁組をする例もあったそうです。
民法IV 補訂版 親族・相続

民法上は、養子縁組が有効か無効かは、「養子であることの法的効果を全面的に享受する意思があるか」で判断すればよいとされています。
法的効果は、成年を養子にする場合、相続と扶養くらいしかないとされています。
つまり、養子縁組するなら、相続や扶養を受け入れなければならないということです。
お忘れなく。
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養子縁組の偽装のお話。
養子縁組は、以前から悪用される例が後を絶たず、問題視されていました。
最近、また話題になってきましたね。
実際には養子になる気がないのに届出を出して養子を装う問題です。
養子縁組には、普通と特別の2種類があります。
特別養子縁組は親子の結びつきが強い縁組。家裁の手続が必要など要件も厳しいため、普通養子縁組のように悪用される例は多くありません。
養子縁組のうち、普通の養子縁組のほうは、市町村に届出をするだけで成立します。
多少の要件はありますが、二人の同意があれば成立するもの。
悪用されるのはカンタンにできる普通養子縁組のほうです。
この養子縁組はなぜ悪用されてしまうのでしょうか?
養子縁組が悪用されるのは、戸籍上の名字が変わることで、別人を装えちゃうからです。別人のフリができれば、借金をするほか、銀行口座を開設したり、ケータイをつくったりできますね。
そして、それらは売れる。その後、詐欺に使われる、という流れです。
実際に、偽装縁組で刑事裁判になっているケースでは、詐欺や文書偽造などとセットにされていることが多いのです。
このように戸籍を使うことで、現金を手に入れることができてしまうのが悪用される原因。
偽装縁組は、自分の意思でする場合のほか、騙されてしたり、ひどい時には無断で養子縁組をされてしてしまう例もあります。
身分証明書を紛失したら、勝手に縁組されたというニュースもありました。
私が相談を受けたケースでは、「先輩から言われて10人以上と養子縁組をしてしまっている」という方もいました。
このように悪用されまくっていた養子縁組。
そのため、なんとかしなきゃいけない、ということで、市町村に出された届出が不審な場合には、法務局に照会が行き、すぐには受理しない扱いがされることになりました。
http://www.asahi.com/national/update/0108/TKY201101080156.html
これによって、何人もと連続して養子縁組をするというケースは少なくなるかもしれません。
それでも、この網を抜ければ、まだまだ悪用されてしまいます。
このように悪用される養子縁組の偽装にはリスクが3つあります。
1番目は刑事リスク。
本当には養子縁組をする意思がないのに、縁組の届出を出すことは犯罪です。
公正証書原本不実記載、同行使(または電磁的)になります。
これは年間1100~1200件程度検挙されている犯罪。
もちろん、詐欺や文書偽造もからむとドンドン重くなります。
2番目が相続リスク。
戸籍という形式上は、親子関係が生じてしまっているため、
相続
が発生します。
養子縁組を繰り返して戸籍上10人の親がいる形になっていると
その形式上の親が借金を残して死亡した場合
10人分の借金の請求が来ます。
もちろん、請求が来た時点で、養子縁組の無効確認請求をしたり、相続放棄という手続でこのリスクは避けられますが、手間ですよね。
手に入れたわずかなお金よりも遙かに面倒なリスクが待っているはずです。
3番目が扶養リスク。
さらには、形式上は親子ですので、
「養ってくれよ~」と親から請求されることもあるかもしれません。
自分が無効な縁組だと争っても、相手が「いやいや、私たち親子だよね?」と言い始めたら、これまた面倒です。
これらのリスクがあるため、無効になるような偽装養子縁組はしないに越したことはありません。
養子縁組が偽装だとして無効とされるかどうか、多くは、養子縁組の意思があるかどうかにかかってきます。
じつは、この養子縁組は、悪用されるケースのほか、便宜的に使われてきた実績があります。
養子が多いと相続税が安くなる時代には、節税のために多くの養子縁組がされました。
また、刑務所の面会のために養子縁組をする例もあったそうです。
民法IV 補訂版 親族・相続

民法上は、養子縁組が有効か無効かは、「養子であることの法的効果を全面的に享受する意思があるか」で判断すればよいとされています。
法的効果は、成年を養子にする場合、相続と扶養くらいしかないとされています。
つまり、養子縁組するなら、相続や扶養を受け入れなければならないということです。
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