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弁護士の石井です。
警察署で接見の順番を待っていたときのこと。
一般の方が、勾留されている家族にマンガの差し入れをしていました。
『闇金ウシジマくん』
闇金ウシジマくん 21 (ビッグコミックス)

まさかヤミ金をして勾留されている人ではないと思いますが、それでも心配になります。
後日、この差し入れが問題にならないか・・・
裁判にて
情状証人として、母親の証人尋問が実施。
弁護人「あなたは、被告人の母親として、被告人を監督していけますか」
母親「はい。もう二度と悪いことはさせません」
- 検察官の反対尋問 -
検察官「被告人に悪いことをさせないって言いますけど、具体的にどうするつもりなんですか?」
母親「もっと会話をしたりしようと思います」
検察官「なるほどね~
お母さん、被告人にはどのくらいの頻度で接見に行っていましたか?」
母親「心配でしたので、会える日は毎日行きました」
検察官「なにか差し入れをしたことはありますか?」
母親「ええ。服とかマンガとか」
検察官「マンガ。あなたが差し入れをしたのは、『闇金ウシジマくん』ですよね?」
母親「たしか、そんなタイトルだったと思います」
検察官「なんで、このマンガを差し入れたんですか?」
母親「息子が好きなマンガだったので・・・」
検察官「これ、ヤミ金のマンガですよね?」
母親「ええ、おそらく」
検察官「タイトルがヤミ金ですよね?ヤミ金のマンガを差し入れることに抵抗はありませんでしたか?」
母親「そんなこと考えませんでした」
検察官「あなたは、悪いことして捕まっている被告人に対して、ヤミ金になれって思ってるんですか?」
母親「そんな・・・」
検察官「あなたはヤミ金が違法だってことは知ってますよね」
母親「はい」
検察官「更生して欲しいって思っている相手に渡しますか?ヤミ金のマンガを」
弁護人「異議があります。議論になってるかと」
裁判官「検察官、まー、マンガの話はこれくらいでいいんじゃないですか?」
検察官「では、先ほどの質問は撤回して、重要な点を確認します。
あなたは、これから被告人を監督していくなかで、『闇金ウシジマくん』を読ませ続けるのですね?」
母親「そ、そうですね・・・そこまで言われると、読ませない方がいいのかな、という気がしてきました」
- 弁護人再主尋問 -
弁護人「お母さん、あなたは、マンガの差し入れをする前に『闇金ウシジマくん』というタイトルを聞いたことがありますか?」
母親「そういえば・・・新聞でみた気がします」
弁護人「新聞の、何欄ですか?」
母親「テレビ欄です」
弁護人「『闇金ウシジマくん』がテレビ欄に出ていた?どういう形で載っていたのですか?」
母親「ドラマになっていたんじゃないかしら」
弁護人「あなたは、このマンガはヤミ金になることを勧めるマンガだと思っていましたか?」
母親「いいえ!そんなマンガがテレビになるわけないですし」
弁護人「あなたは、このマンガは、違法なことを勧めるものではない、そう思って差し入れたのですね」
母親「はい」
- 証拠提出 -
裁判官「弁護人、他に立証予定はありますか?」
弁護人「はい、『闇金ウシジマくん』1巻から21巻までを証拠提出したいと思います」
裁判官「ええ!?立証趣旨は?」
弁護人「母親が差し入れたマンガは、違法行為を助長するものではなく、母親の監督能力は十分あるという事実です」
裁判官「うーん、検察官のご意見は?」
検察官「12巻・・・いや、全巻同意します」
裁判官「え?同意?全巻?それ、21巻まで読まなきゃいけないの?」
被告人「ええ、最初だけ読んでもわからないと思います」
- 論告 -
検察官
「母親は、被告人を監督すると誓っていますが、その監督能力には疑問があります。
母親は、被告人の勾留中、『闇金ウシジマくん』のような、違法なヤミ金融を主人公とするマンガを差し入れるなどしており、被告人の好むものであれば、違法行為を助長するものであっても、被告人に与えるという性格です。
『闇金ウシジマくん』には、たとえば1巻には『売春ネタで脅して400万ゲッツだ!!』などと、明らかに違法行為を繰り返す登場人物が描かれており、勾留中で本来反省を深めなければならない時期に読むべきものでないことは明らかです。
このようなマンガを差し入れる母親のもとでは、被告人は十分に更生できるか疑問が残ります」
闇金ウシジマくん 1 (ビッグコミックス)

- 弁論 -
弁護人
「被告人の母親は、今後、被告人を監督すると誓っています。その監督は十分に機能することから、被告人が同じ過ちを繰り返すことはありません。
被告人の母親が差し入れた『闇金ウシジマくん』ですが、ヤミ金融を一応の主人公としているものの、同作品は、ヤミ金融を利用するに至ってしまった弱者を取り巻く人間模様を描いたものであり、違法行為を助長する作品ではありません。
たとえば、12巻には『仕事は誰かの役に立っている。もっと僕はちゃんと仕事をしなきゃダメなんだ』などと弱いながらも、社会で生きていく人物が描かれており、被告人の社会復帰を支える要素もあります。
タイトルは、勾留中に差し入れるマンガとして不適切だった可能性もありますが、被告人の母親は、テレビドラマ化もしている同作品に問題があるとは考えていなかったことから、この差し入れだけをもって、監督能力がないと言い切ることはできません」
闇金ウシジマくん 12 (ビッグコミックス)

- 法廷から出た母親と弁護人 -
母親「先生、すみませんでした。私が深く考えずにヤミ金のマンガなんか差し入れたために・・・」
弁護人「終わった話は仕方ないですよ。裁判は、『闇金ウシジマくん』論争みたいになってしまいましたが、執行猶予はつくと思いますよ。」
母親「もう、私も反省して、ヤミ金のマンガの最新刊が発売されても、差し入れはしてないんですよ」
弁護人「まあ、今はやめておいた方がいいですよね。」
母親「代わりに、これを差し入れているんです。
『クロサギ』」
クロサギ 18―戦慄の詐欺サスペンス (ヤングサンデーコミックス)

弁護人「いや、だから、犯罪モノはやめて・・・」
次回、弁論再開の予感---
--------------------------
以上は、妄想裁判ですが、ネット上に出ている傍聴記を読むと、現実の裁判で「ゲームの攻略本」を差し入れたことを検察官に追及されている事件もありました。
また、弁護士のサイトでも、少年事件でパチスロ攻略本が差し入れされていることが、環境が悪いと評価される原因になったというケースが紹介されています。
http://www.tokuoka-miyatake.com/life/09.html
家族が逮捕・勾留されたとき、何を差し入れたら良いか、本人の希望にだけ従っていると、思わぬ落とし穴があるかもしれませんのでご注意下さい。
警察署で接見の順番を待っていたときのこと。
一般の方が、勾留されている家族にマンガの差し入れをしていました。
『闇金ウシジマくん』
闇金ウシジマくん 21 (ビッグコミックス)

まさかヤミ金をして勾留されている人ではないと思いますが、それでも心配になります。
後日、この差し入れが問題にならないか・・・
裁判にて
情状証人として、母親の証人尋問が実施。
弁護人「あなたは、被告人の母親として、被告人を監督していけますか」
母親「はい。もう二度と悪いことはさせません」
- 検察官の反対尋問 -
検察官「被告人に悪いことをさせないって言いますけど、具体的にどうするつもりなんですか?」
母親「もっと会話をしたりしようと思います」
検察官「なるほどね~
お母さん、被告人にはどのくらいの頻度で接見に行っていましたか?」
母親「心配でしたので、会える日は毎日行きました」
検察官「なにか差し入れをしたことはありますか?」
母親「ええ。服とかマンガとか」
検察官「マンガ。あなたが差し入れをしたのは、『闇金ウシジマくん』ですよね?」
母親「たしか、そんなタイトルだったと思います」
検察官「なんで、このマンガを差し入れたんですか?」
母親「息子が好きなマンガだったので・・・」
検察官「これ、ヤミ金のマンガですよね?」
母親「ええ、おそらく」
検察官「タイトルがヤミ金ですよね?ヤミ金のマンガを差し入れることに抵抗はありませんでしたか?」
母親「そんなこと考えませんでした」
検察官「あなたは、悪いことして捕まっている被告人に対して、ヤミ金になれって思ってるんですか?」
母親「そんな・・・」
検察官「あなたはヤミ金が違法だってことは知ってますよね」
母親「はい」
検察官「更生して欲しいって思っている相手に渡しますか?ヤミ金のマンガを」
弁護人「異議があります。議論になってるかと」
裁判官「検察官、まー、マンガの話はこれくらいでいいんじゃないですか?」
検察官「では、先ほどの質問は撤回して、重要な点を確認します。
あなたは、これから被告人を監督していくなかで、『闇金ウシジマくん』を読ませ続けるのですね?」
母親「そ、そうですね・・・そこまで言われると、読ませない方がいいのかな、という気がしてきました」
- 弁護人再主尋問 -
弁護人「お母さん、あなたは、マンガの差し入れをする前に『闇金ウシジマくん』というタイトルを聞いたことがありますか?」
母親「そういえば・・・新聞でみた気がします」
弁護人「新聞の、何欄ですか?」
母親「テレビ欄です」
弁護人「『闇金ウシジマくん』がテレビ欄に出ていた?どういう形で載っていたのですか?」
母親「ドラマになっていたんじゃないかしら」
弁護人「あなたは、このマンガはヤミ金になることを勧めるマンガだと思っていましたか?」
母親「いいえ!そんなマンガがテレビになるわけないですし」
弁護人「あなたは、このマンガは、違法なことを勧めるものではない、そう思って差し入れたのですね」
母親「はい」
- 証拠提出 -
裁判官「弁護人、他に立証予定はありますか?」
弁護人「はい、『闇金ウシジマくん』1巻から21巻までを証拠提出したいと思います」
裁判官「ええ!?立証趣旨は?」
弁護人「母親が差し入れたマンガは、違法行為を助長するものではなく、母親の監督能力は十分あるという事実です」
裁判官「うーん、検察官のご意見は?」
検察官「12巻・・・いや、全巻同意します」
裁判官「え?同意?全巻?それ、21巻まで読まなきゃいけないの?」
被告人「ええ、最初だけ読んでもわからないと思います」
- 論告 -
検察官
「母親は、被告人を監督すると誓っていますが、その監督能力には疑問があります。
母親は、被告人の勾留中、『闇金ウシジマくん』のような、違法なヤミ金融を主人公とするマンガを差し入れるなどしており、被告人の好むものであれば、違法行為を助長するものであっても、被告人に与えるという性格です。
『闇金ウシジマくん』には、たとえば1巻には『売春ネタで脅して400万ゲッツだ!!』などと、明らかに違法行為を繰り返す登場人物が描かれており、勾留中で本来反省を深めなければならない時期に読むべきものでないことは明らかです。
このようなマンガを差し入れる母親のもとでは、被告人は十分に更生できるか疑問が残ります」
闇金ウシジマくん 1 (ビッグコミックス)

- 弁論 -
弁護人
「被告人の母親は、今後、被告人を監督すると誓っています。その監督は十分に機能することから、被告人が同じ過ちを繰り返すことはありません。
被告人の母親が差し入れた『闇金ウシジマくん』ですが、ヤミ金融を一応の主人公としているものの、同作品は、ヤミ金融を利用するに至ってしまった弱者を取り巻く人間模様を描いたものであり、違法行為を助長する作品ではありません。
たとえば、12巻には『仕事は誰かの役に立っている。もっと僕はちゃんと仕事をしなきゃダメなんだ』などと弱いながらも、社会で生きていく人物が描かれており、被告人の社会復帰を支える要素もあります。
タイトルは、勾留中に差し入れるマンガとして不適切だった可能性もありますが、被告人の母親は、テレビドラマ化もしている同作品に問題があるとは考えていなかったことから、この差し入れだけをもって、監督能力がないと言い切ることはできません」
闇金ウシジマくん 12 (ビッグコミックス)

- 法廷から出た母親と弁護人 -
母親「先生、すみませんでした。私が深く考えずにヤミ金のマンガなんか差し入れたために・・・」
弁護人「終わった話は仕方ないですよ。裁判は、『闇金ウシジマくん』論争みたいになってしまいましたが、執行猶予はつくと思いますよ。」
母親「もう、私も反省して、ヤミ金のマンガの最新刊が発売されても、差し入れはしてないんですよ」
弁護人「まあ、今はやめておいた方がいいですよね。」
母親「代わりに、これを差し入れているんです。
『クロサギ』」
クロサギ 18―戦慄の詐欺サスペンス (ヤングサンデーコミックス)

弁護人「いや、だから、犯罪モノはやめて・・・」
次回、弁論再開の予感---
--------------------------
以上は、妄想裁判ですが、ネット上に出ている傍聴記を読むと、現実の裁判で「ゲームの攻略本」を差し入れたことを検察官に追及されている事件もありました。
また、弁護士のサイトでも、少年事件でパチスロ攻略本が差し入れされていることが、環境が悪いと評価される原因になったというケースが紹介されています。
http://www.tokuoka-miyatake.com/life/09.html
家族が逮捕・勾留されたとき、何を差し入れたら良いか、本人の希望にだけ従っていると、思わぬ落とし穴があるかもしれませんのでご注意下さい。
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--続編希望--
21巻まで読了した裁判官サイドもぜひ!
21巻まで読了した裁判官サイドもぜひ!
by: Red-ips * 2011/06/21 12:12 * URL [ 編集] | page top↑
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ありがとうございます!
現実の裁判なら間違いなくスルーされそうですが、アタックしてみます。
ありがとうございます!
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