なぜ我が家ではテレビの話ばかりされるのか?
弁護士の石井です。


最近、家に帰ると、家族からは

「えびぞうが大変」
「犯人が捕まった」
「血痕が出てきたんだって」

などと某芸能ニュースの話をされる日が続いていました。

それ以外にも、
「リンゴは○○に良いんだって」
「あのコンビニの○○が美味しいんだって」
などという、全てテレビからの情報。

皆さんの周りにも、こんな人いませんか?

もはやテレビに支配されているとしか思えません。


弁護士という立場上、心配になります。
うちの家族は、騙されやすいんじゃないかと。
テレビでタレントが勧めたら、何でも買っちゃいそうな気がします。怖い。

このようなタレントの信用力は悪用されることがあります。

微妙なポジションのタレントが、悪質商法の広告に載っている、ということはよくある話。
タレントが勧めている(とは限らないけど)んだから、間違いがないだろうと安心させるという効果があるからでしょう。

「自分はそんな影響を受けない」と半信半疑な人もいるでしょう。
しかし、この効果は事実なのです。

私自身、この心理効果を感じたことがあります。
学生時代に、怪しい会員権を買うように勧誘されたことがありました。そのときに見せられたパンフレットには、微妙なポジションのタレントが何人か載っていました。
その写真を見たときに、私自身、「あれ?ひょっとして、これってまともな商品なのかな?」という気持ちが芽生えてしまいました。

人は、ふだん接している人、目にしている媒体には親近感を抱き、警戒心が減るのです。

そのため、ふだん読んでいるパチンコ雑誌に詐欺広告が載っていると、思わず信じちゃったりします。
新聞広告に間違っている情報が載っていても、信じちゃったりするのです。

あなたが宣伝していたから、あの媒体が宣伝していたから買ったのに・・・

ということで、広告に出ていたタレントや媒体の責任が追及される裁判も多いです。


パチンコ攻略法詐欺に関する雑誌の責任は過去の記事で触れたことがあります。

このような裁判は昔からされています。

最高裁平成元年9月19日判決では、新聞発行体や広告代理店の責任が問われました。
新聞広告を見てマンションを買ったところ不動産会社が破産してしまい、マンション着工にも至らなかったことから、買主らが新聞発行社や広告代理店の責任を追及した事件です。判決では、「広告媒体業務にも携わる新聞社並びに同社に広告の仲介・取次をする広告社としては、新聞広告のもつ影響力の大きさに照らし、広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情があって読者らに不測の損害を及ぼすおそれがあることを予見し、又は予見しえた場合には、真実性の調査確認をして虚偽広告を読者らに提供してはならない義務」があるとしています。

つまり、新聞社や広告代理店は、広告内容をしっかり調査しなきゃだめですよ、と言っています(結論としては責任を否定)。


大阪地裁昭和62年3月30日判決では、詐欺広告に推薦文を載せた芸能人にも責任を認めています。
「被告会社の不法行為が詐欺を内容とするものであることに鑑みれば、被告会社及びその扱う商品を紹介・推薦し、これに対する信頼を高めることは、とりもなおさず被告会社の不法行為を容易ならしめることに外ならない」
「そして本件では、広告主たる被告会社の事業内容・信用性はもとより、その扱う商品(北海道の山林、原野)の価値についても原告ら一般人はその判断資料を殆ど持ち合わせていないのであるから、(中略)いわゆる有名人による第三者的な立場からの推薦が大きな判断資料となる可能性が高いといわなければならない。」


このように、広告やタレントを信じてしまったばかりに騙される例は昔からあるのです。

騙されてしまった事後処理としては、裁判例のように、広告に関わった人の責任追及をしていく方法が考えられますが、一番大事なことは、メディアの情報を信じる、信じないを、自分でしっかりと考えないといけないという点です。

最近、読んだ『ドキュメント戦争広告代理店』という本では、メディアを使った広告代理店が、国同士の戦争の結果に大きな影響を及ぼし、国際的な国のポジションまで決めてしまうという恐ろしい話がされています。
広告代理店が準備した一つのキーワードや一枚の写真で、国の運命が変わってしまうことが実際に起きていたのです。
ドキュメント 戦争広告代理店 (講談社文庫)
ドキュメント 戦争広告代理店 (講談社文庫)


入ってくる情報をそのまま鵜呑みにしていると、恐ろしいことになります。
一歩離れてみる習慣を身につけることが大事です。

私自身についていえば、この習慣を身につけてから、一時的な情報に踊らされず、時間やお金を有効に使えるようになりました。

唯一の問題点は、テレビ狂の家族との会話が微妙に険悪になっていることくらいです。



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2010/12/16(Thu) | 消費者問題 | トラックバック(0) | コメント(2) | page top↑
コメント
--メディアの責任は重大だと思います--

おはようございます
いつも拝見させていただき勉強させていただいいます
「テレビや新聞の情報を鵜呑みにしないこと」は大事だけどすごく難しいことだと思います(それ以外である程度確からしい情報を得ることはなかなか難しいので)
それゆえにメディアの責任は重大と思います
広告だけでなく本文もしかりで世論誘導など簡単にできると思います
小沢一郎氏や鈴木宗男氏の件を見るとメディアが「こいつ怪しい」とすれば裁判にかけられ有罪になるような魔女狩り的世の中にならないかと心配になります
私は税理士事務所の職員ですが、税務当局との見解の相違を「申告漏れ」と報道されるのを嫌がって当局の気に入る申告をしている会社が多いのではないかと思います
上記の「申告漏れ」報道は会社が異議申立を行う意思表示をしていてもなされます
by: panchan1014 * 2010/12/17 08:30 * URL [ 編集] | page top↑
--Re: メディアの責任は重大だと思います--

コメントありがとうございます。

申告漏れの報道のお話と、刑事事件で逮捕された時点で報道されたときの「無罪推定の原則はどこへ行ったんだ?」という話、とても似ていると感じました。

世論誘導されないためには、多くの人が「世論誘導など簡単にできる」と思い始めることですよね。
テレビや新聞は道具としてすばらしいものなので、うまく使ってくれればいいのに、と思います。
by: 石井 * 2010/12/20 06:02 * URL [ 編集] | page top↑
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