以前に取り上げた不倫SNSの情報流出問題で、自殺者も出てしまったと報道されました。
http://www.cnn.co.jp/tech/35069362.html
※参考記事「不倫サイト情報流出問題」
http://sagamigawa.blog73.fc2.com/blog-entry-765.html
危惧していた詐欺以外に、恐喝事件も起きているようです。
仕事用のアドレスで登録していたりすると、地位もバレバレですから、恐喝のターゲットになりやすいのでしょう。
Newspicksで、このニュースに対する荘司雅彦弁護士のコメントが刺さりました。引用します。
https://newspicks.com/news/1124948?ref=user_100616
『社会的非難に遭いやすい「公職」に就いている人たちは、確かに恐喝のターゲットにされる怖れがあります。
対処法が難しいですね~。
誰か暴露被害者が出れば、犯人は「要求に応じなければ○○のようになる。(実は違っていても)あれは俺の仕業だ」と脅すでしょうから、毅然たる態度がとりにくい。
かといって、一度要求に屈するととことん搾り取ろうとするのが恐喝犯の常道です。
まあ、公職を捨てればいいのでしょうが、命がけで地位を守りたいのが公職者の性(さが)ですし・・・。
警察もバカじゃないので、自殺する前にしっかり相談することをお勧めします。
詐欺や恐喝の摘発のために、被害対策担当の警察官やわれわれ弁護士等が個人名でどんどん登録することが有効でしょう。
「犯人さん、いらっしゃい」ですね(*^_^*)』
われわれ弁護士等が個人名でどんどん登録することが有効。
この発想はなかったです。
登録者に対して詐欺犯や恐喝犯がアクセスしてくる。
しかし、それは摘発のために登録していたワナ。
振り込め詐欺で使われている、だまされたふり作戦と同じです。
おどされたふり作戦。
ワナが増えれば増えるほど、犯人は動きにくくなりますね。
不貞はよろしくありませんが、自殺するほどの問題かよ、と思いますので、こんな二次被害は避けたいところ。
今から登録したところで、犯人がアクセスできる環境下に置かれるのかよくわかりませんが、日本での被害多発を回避するためにも、警察や弁護士の方々は身を挺して登録してみましょう!
というわけで、万一、不倫サイトから、私の情報が出てきたとしても、ええ、社会正義のために登録したものですので、誤解なさらぬように!!
「ちょっと、アンタ、不倫サイトに登録してるでしょ!」とパートナーから責められた際には、
「あれ、知らないのかい?いま、弁護士や警察では、詐欺や恐喝対策のために、実名で登録する動きがあるんだ。僕も日本での被害を発生させないために、囮として登録しているだけだよ。あ、この話は内密にね」と主張できますね。
バラされても怖くない状態に持っていけば、詐欺や恐喝にはひっかかりません。
やましさをなくすのが、最高の対策。
最後に、このサイトの中の女性はほぼ偽物という報道もされました。
http://news.livedoor.com/article/detail/10520347/
「不倫サイトに登録してるでしょ!」と責められたら、
「あれはいくら頑張っても不倫できないサクラサイトなんだよ」と切り返すのも一つの方法です。
ご相談は相模川法律事務所ホームページへ
弁護士石井琢磨twitter
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振り込め詐欺の実態を明らかにした書籍として、
『職業“振り込め詐欺”』がありました。
職業”振り込め詐欺” (ディスカヴァー携書)

詐欺集団が、まるで会社?
と感じるように組織化され、若者を取り込んでいる様子が描かれている一冊。
この新バージョンと言っても良い本が『老人喰い』。
老人喰い:高齢者を狙う詐欺の正体 (ちくま新書)

詐欺集団は、さらに進化しています。
『職業~』よりも、高度化した手法が描かれています。
たとえば、振り込め詐欺といっても、その初期に出てきた「オレ、オレだよ」という第一声はなく、下調べをします。
警察を装って調査だと電話をかけて情報を引き出しておいたりするのです。
そして、詐欺の実行日には「健介だけど」と名前を出すのです。
さらには、会社名や家族の名前まで実名で登場してくることもあります。
信じちゃう確率が上がりますよね。
しかし、それだけではありません。
実際にお金を振り込む被害者の中には、「振り込め詐欺ではないか?」と疑う人もいるそう。
詐欺師は、「それでも騙せる」と言います。
疑う人すら騙せる
騙してくるグループにはキレ役がいます。
息子役が迷惑をかけた相手の役が激しくキレるのです。
息子が痴漢をした示談金という手口の場合、こんなキレ役が出てくる。
「示談とかふざけんな!どういう育て方したんだあんた、これあんたの責任だぞ!!まず謝れよ親として!うちの娘はな、ずっと中学校時代いじめられて不登校で、やっと落ち着ける高校に入って、これからってタイミングなんだぞ!あんたの息子、その娘の人生台なしにしやがって、金でどうこうって話じゃねえだろ」(35ページ)
まず、こういうキレ方をされて、怖がり、混乱して払ってしまう人がいます。
次に、「何か怪しい」と感じる人がいます。ただ、電話の向こうではキレ役が怒鳴り散らしている。
そんなときの被害者の心境。
詐欺だとして電話を切る? → 万一、違ったら息子の社会的生命は奪われる。
警察に連絡してみる? → 詐欺じゃなかったら、示談どころじゃなくなる。
怪しいと感じつつも、取り返しのつかない事態を避けるため、払ってしまうのです。
さらに、「これは詐欺だ」と感じた人の中にも払ってしまう人がいるそう。
「なぜなら情報を強化した名簿で架電(電話)している時点で、詐欺電話の端々から大切な家族の個人情報が詐欺師に掴まれていることを、被害者は把握している。となれば、被害者の胸中に沸き起こるのは、被害者本人や子供や孫にまで「詐欺犯罪者による報復」が行われるかもしれないという不安だ。」(41ページ)
騙しより脅しに近い手法になっているのです。
詐欺はなくならない?
このように高度化した詐欺を含めた老人喰いについて、著者は「なくならない」と断言しています。
なぜなら、振り込め詐欺は組織化どころではなく、もはや産業になっているから。
一つ一つの手法への対抗策を考えるだけでは不十分なのです。
すぐに新しい手法が出てきます。
預金での振り込み→銀行の窓口での停止
→宅急便や郵便で送らせる→宅配業者や郵便局での警戒
→現金での授受
と代替手段がすぐに出てきます。
詐欺が産業になった原因は、格差にあると言います。
振り込め詐欺が何年もなくならないのを見て、これは高齢者の資産が若者に移転しているのではないかと薄々感じていました。
まるで相続で子の世代、孫の世代に資産が移転するのと同じように、若者世代に移転している印象を受けます。
本書でも、同じような指摘がありました。
産業となった詐欺の組織では、新人を育てる際に、洗脳します。
高齢者を敵と設定した洗脳です。
「俺は不思議でしょうがない。この使い切れない金を、なんでこいつらは使わないんだ?
高級車買ってゴルフやってる奴らは、まだマシだよ。こいつらが金使うことで、若い人間も仕事ができる。物を買えば、それを作る若い人間に金が回る。だけどほとんどの老人は、ただ自分のために金を溜め込んで使わない。奪われないように、減らないように、目えギラギラさせて、金を抱え込んでる。日本中の金を持ってるこいつらが金を使わないから、ますます若い人間は働いても働いても、貧乏から抜け出せねえ。」
「日本の老人は、世界中でも最も金持ちで、最もケチな人種だ。若い人間が食えなくてヒイヒイ言ってる中で、金もってふんぞり返ってるこいつらから、たった200万程度を奪うことに、俺は一切の罪悪感を感じない。むしろ俺はこの仕事を誇りに思ってるよ」
高齢者=敵。
この主張を裏付ける平均預金額などのデータを出したりもするわけです。
資産の格差、そして、資産が増えない見込みが若者の肌感覚であること。
これを前提に詐欺を正当化しているのです。
ピケティの本では、資産格差によって、格差はさらに拡大すると言われています。
21世紀の資本

だとすれば、いま、資産を持たない若者は、今後も資産を増やせないことになります。
このような格差の構造から詐欺産業が成長したのです。
私が会った振り込め詐欺犯には、罪悪感を持っていた人もいましたが、今回の本では、彼らは罪悪感を持っていない。それどころか、金を持っているのに使わない高齢者に対して敵意を抱いています。
詐欺師は、敵意を持って財産を奪いに来るようになりました。
ここまでの敵意があるとは意外でした。
敵意を持った一大産業と戦う。
この意識が必要です。
「なくならない」という著者の主張にも説得力があります。
振り込め詐欺で捕まるのはせいぜい末端のみ。
「うちの親は大丈夫」なんて安心はできません。
本質的な対策は、親に財産を持たせないことくらいしかないのかもしれません。
とりあえず対処療法的な方法として、「ふざけんな!」と叫ぶキレ役に動じてしまうことを防ぐには、あ、いい本を見つけました(笑)。
めんどうな人を サラリとかわし テキトーにつき合う 55の方法

騙す側は、大声に怯んでいるから「いけそう」と判断するわけで、サラリとかわす相手には、労力をかけないでしょう。
財産を守るためには、かわせる技術も大事になってきます。
お盆の帰省の際には、ぜひ親にプレゼントしてあげてください。
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