未来小説「know」から予知する、ウェアラブルとオレオレ詐欺の未来 
弁護士石井琢磨です。

『know』という未来小説が面白かったので紹介します。

know (ハヤカワ文庫JA)
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未来では、あらゆるものに情報材が塗られ、脳内に「電子葉」という補助脳を入れている設定です。
ネット検索が脳内で瞬時にできるようなものです。

2014年はウェアラブル端末と言って、腕時計やメガネなど身に付ける物にコンピュータ機能を加えたものがたくさん出ると言われています。
ソニーのスマートカツラなんて話もありました。


この流れが発展していくと、もう脳内に入れちゃえ、となるのです。
電子葉があると、メールなどの情報は自分の目の前に現れますし、メールの着信を知らせる音もダイレクトに耳に届くのです。
イヤホンなんていらない。

かなり便利な未来です。

情報格差



ただ、小説の世界では、あらゆる人が、あらゆる情報にアクセスできるわけではありません。
市民は、クラス分けされ、
・アクセスできる情報
・守られる個人情報
が決まります。


大臣だとクラス6で国家機密にもアクセスできますが、標準の市民はクラス2でアクセスできる情報も守られる個人情報も制限があります。

慈善活動をすると、クラス3に上がったり、交通違反で罰則を受けるとクラス1に落ちたりします。


未来の口説き方



小説の主人公は、情報庁という組織のエリートのため、クラス5が与えられています。
国家機密以外のほとんどの情報にアクセスできるのです。

彼は、この能力を使って、女性を口説いたりします。
相手の趣味嗜好を知ることで、「初対面と思えないほど話が合った」という状態を作り出せるのです。
簡単に「運命の相手」だと思ってもらえることでしょう。

情報を持っていると強い。


未来の生活保護



逆に、クラスが落ちると、現代の価値観からすると、ひどい生活が待っています。

生活保護を受けていると、クラス0

ほとんど情報を得られず、個人情報も守られません。

クラス0の女の子の情報は、いくらでも盗み見られてしまうのです。
プライベートは垂れ流されてしまいますし、裸の画像すら簡単に入手されてしまいます。


情報化社会が進むと、情報格差が生じ、極端な社会だとこのような世界になるかもしれません。


情報化とウソつき



警察



このような情報化社会では、ウソをつきにくくなります。

この世界の警察の取調室がどうなっているかと言うと、
情報材の素子密度が非常に高いとのことで、室内の情報は高精度にモニタリングされるのです。

脈拍、体温、挙動不審もすべて拾われます。


室内がまるごと嘘発見器のようになっているのです。

ただ、ここでもクラスの壁はあり、クラス5の人間の取調べをしようとしても、その情報にはなかなかアクセスできないのです。

クラスの低い人が相手なら、簡単に真実を暴けるのでしょう。


情報化でウソがつけない社会のリスク



ウソがつけない社会なんていいね!、と考える人がいるかもしれません。

しかし、ものすごいリスクもあります。

ハッキングです。

「知る」とは、五感を使って情報を脳にインプットすることです。
五感を使う際に、電子葉という脳内のコンピュータを使っていると、それをハッキングされ、五感を操作されてしまうリスクがあるのです。

相手の目に気持ち悪いものを見せたり、音を聞かせたりすることもできてしまうのです。

自分は変装していないのに、特定の相手の電子葉をハッキングし、視覚を操作することで、その相手には別人に見せることができます。
指名手配されていても、警察から見ると別人に見えてしまう。


未来の新オレオレ詐欺



ハッキング能力があれば、簡単にオレオレ詐欺ができてしまうのです。

今は、電話で「オレ」と言って信じ込ませるだけですが、同じようなことが相手の視覚を操作することで、現実世界の映像としてできてしまいます。

息子のように見え、息子の声に聞こえる人物にお金を渡しても、その視覚や聴覚は操作されていただけで全くの別人、ということがあり得るのです。

便利だけど、ハイリスクな世界なのです。

ネット銀行が便利な一方で、フィッシングでパスワードを知られ、預金も奪われる事件が増えている。
この延長線にある構造ですね。


まとめ



小説のような世界が来るかはわかりませんが、これからもっと便利な未来が来るのは間違いありません。
便利なツールを導入するときに、忘れてはいけない視点をもらえる一冊です。

60年後に新オレオレ詐欺に遭いたくない人は、読んでみてください。


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「交渉は情報戦」と言っていた本がありましたね。

プロ弁護士の「心理戦」で人を動かす35の方法
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2014/01/25(Sat) | | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
振り込め詐欺犯が「プリキュア37人」と言われて電話を切った理由
弁護士石井琢磨です。

振り込め詐欺の電話がかかってきた際に、母親が
「プリキュア37人言えるか」
と聞いたら、犯人が慌てて切った、と話題です。

警視庁犯罪抑止対策本部がリツイートし、「オタクは無駄なものではなく役に立つ(こともある)」とコメントしていますね。

警視庁



映画プリキュアオールスターズNew Stage2 特装版DVD


プリキュアって何十人もいるんですね。


親子のあいだで、他人に答えられない合図を決めておくことは有効です。


140110プリキュア



犯人が電話を切った理由



ただ、勘違いしてはいけません

このような事件があったとして、犯人は、おそらく、

プリキュア37人の名前がわからなかったから慌てて切ったのではありません。

疑われたから切ったのでしょう。



本当は、犯人もプリキュアファンで、37人の名前を30秒で言えたかもしれません。

でも、母親が、疑いの態度を示したから電話を切ったのです。


確率論による効率的な動き



振り込め詐欺グループは確率論で動いています。
架空請求のハガキを大量に送るのと同じで、たくさんアクセスして、一定数、だませる人が見つかれば良いのです。

だませる可能性が低い人はさっさと切って、次に行く。

それが効率的な活動です。

「うちの子なら、プリキュアを知っているはずだ」と疑っている相手をだませる可能性は低いです。
あえて、そこに時間をかけるより、もっとラクな相手を探すという行動なのです。


大事なのは存在よりも発動



合図を決めておくのは有効ですが、むしろ重要なのは、親がその合図を発動することです。

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ちゃんと「プリキュア何人?」と聞けないと意味がありません。

合図を発動して、疑いの態度を示すことが振り込め詐欺の予防になるのです。


しかし、このような合図活動は広まらず、振り込め詐欺の被害は平成25年には過去最悪となっています。

私たちの文化にも原因があります。


信じる美学



合図を作るということは、疑うことが前提です。

しかし、私たちは、他人を疑うことを良しとしません。

むしろ、信じることが美しいと感じます。

純粋、ひたむきに何かを信じる人間に美しさを感じる文化を持っています。

だから、相手を疑うことに罪悪感を抱いてしまいます。


婚約相手には、疑う人間だと思われたくない。
だから、「いろいろプレゼントしてくれるけど、借金とかしてないよね?」と聞けない。

子供を疑う親だと思われたくない。
だから、「私の通帳から勝手に使ってないよね?」と聞けないのです。

ひょっとしたら、疑う人間だと思われるくらいなら、「信じて裏切られた人間」のほうが望ましいと考えちゃっているのかもしれません。


振り込め詐欺予防の合図を作り、発動させるには、この信じる美学文化を乗り越える必要があります。

そのためには、二段階あります。


第一段階:疑われても文句を言わない文化



「お前、オレのこと疑ってるのかよ」
を禁句とします。

「借金とかしてないよね?」と疑われたら、

「なんて疑い深い女性なのだ。この疑い深さは、結婚生活できっと夫婦の財産を守ってくれる」

というように、マイナス評価を打ち消さなければなりません


第二段階:疑うことが美学



マイナス評価を打ち消すだけでなく、疑うことがプラスに働く文化です。

疑われたら、「オレのこと疑うなんて、可愛いヤツ」と感じちゃう文化。

疑われることは愛。


この段階までいけば、きっとan・anで「疑いが美人をつくる!」という特集がされるでしょう。


まとめ



まったく消えない詐欺グループにこれ以上お金を持って行かれないためには、このような文化的な対応が必要です。

今日から、そんな空気づくりをしようではありませんか。



疑うポイントについては、こちらの本に書いています。

プロ弁護士の「心理戦」で人を動かす35の方法
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2014/01/10(Fri) | news | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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