家族とのつながりを断つ面会禁止について
弁護士石井琢磨です。

年末年始ということもあり、家族と一緒に過ごしている人も多いのではないでしょうか。

急に、家族と連絡を取れなくなったらどう感じるでしょう。


そんなことを考えています。


PC遠隔操作事件について、ジャーナリストの江上紹子さんの記事を読んだからです。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/egawashoko/20131222-00030897/

もう起訴されて、公判前整理手続も進んでいる最中ですが、全面的に面会禁止が続いているらしいです。
家族とも面会できない状態とのこと。


裁判官が、逮捕後の勾留を決定する際、面会を禁止する決定を併せてすることがあります。

この決定がされると、弁護士以外とは会えないのです。

面会を禁止する理由は、逮捕された人と、他人とを会わせてしまうと、「あの証拠を隠してくれ」「捨ててくれ」などというやりとりがされてしまうから。
そのため、共犯者がいる事件や、犯行を否認している事件では、面会が禁止されやすいです。

ただ、弁護士以外との面会では、立会人が会話内容などをメモするので、事実上、事件のことはあまり話せませんし、「隠してくれ」などと伝えるのは難しいです。


禁止理由は、説得力があまりない。


むしろ、誰とも会わせないというのは、逮捕された人と外部とのつながりを断ち、精神的に追いつめ、警察や検察の言うことをきかせやすくするためであると、弁護士業界からは批判されています。

さらに、つながりを断たれて苦しむのは、本人だけではありません。


家族も苦しむことが多いです


『もしも遠隔操作で家族が犯罪者に仕立てられたら ~ネットが生み出すあたらしい冤罪の物語』
もしも遠隔操作で家族が犯罪者に仕立てられたら ~ネットが生み出すあたらしい冤罪の物語


という本では、逮捕者の家族側の視点で、つながりが断ち切られることの苦痛が描かれています。

「警察は、本人、家族、そして弁護士にも、ほとんどなにも教えてくれない。」

ため、家族には、情報が入ってこない。本人の言い分もわからない。


本の中では、そのような家族の苦しみに警察がつけ込む内容も描かれていますので、ぜひチェックしてみてください。


で、私たち弁護士は、そのような本人と家族の苦しみを減らすため、面会禁止という決定がされた場合、面会を認めてもらえるよう働きかけます。

刑事弁護の本に書かれている内容では、

1 勾留の決定前に、裁判官に働きかける
2 準抗告をする
3 特別抗告をする
4 解除請求をする


という方法です。

新版 刑事弁護
新版 刑事弁護



江上さんの記事では、4の解除請求をして、裁判官に家族とだけは会わせてあげて、と働きかけたのに、認めてくれないため、2の準抗告をしたものの、裁判官からはこれも否定された、と書かれています。

刑事訴訟法には、「勾留に関する裁判」に対しては、不服申立ができると明記されているものの、面会禁止決定に対する不服申立ができるという明記はありません。
刑事弁護の本に書かれた方法は、「勾留に関する裁判」という法律の条項の解釈として、面会禁止決定も含めることを前提にしたものでしょう。


マスコミが見向きもしない刑事事件ばかりやっている私の感覚では、家族との面会くらいは、起訴前でも認められることが多いです。起訴後は捜査が終わっているのですから、証拠隠滅という恐れはないはずで、より認められやすいはずです。


遠隔操作事件が本のように冤罪かどうかはわかりませんが、有罪か無罪かという点と、第三者との面会を認めるかどうかは別問題です。

処罰は有罪判決が確定してからすべきものです。

家族との面会を禁止することは、逮捕されている本人の精神状態を狂わすこともあります。

弁護士が毎日会いに行っても、支えられずに、事実と違う供述調書に署名してしまう人はいるのです。

あの憔悴しきった表情を見ると、今後の人生に悪い影響があるとしか思えないのです。



外部との関わりを断ち切られた人の憔悴度について説明するために、一つの制度を紹介します。

遠隔操作事件でも使われた勾留理由開示という制度です。


これは本来、法廷で勾留の理由や証拠を明らかにする制度ですが、その点ではあまり機能していません。

ただ、この申立をすると、逮捕された人が、裁判所の法廷に行けます。

内容を家族が傍聴できたりします。

すると、家族の姿を一目、見ることができるのです。

これが、逮捕された人にとって、リフレッシュになったりします。

その目的で使うのもアリだと、刑事弁護の本に書かれていたりもするのです。



いいですか。


一目、顔を見るだけで、心が安らぐ。

という精神状態になっているのです。

逮捕され、外部との関わりを断たれた人は。


そんな人が何十日、何百日と家族とも会えない日々を送る。

この苦痛を正当化できるのでしょうか。



家族とつながっているときにこそ、考えてほしい問題です。


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もしも遠隔操作で家族が犯罪者に仕立てられたら ~ネットが生み出すあたらしい冤罪の物語
もしも遠隔操作で家族が犯罪者に仕立てられたら ~ネットが生み出すあたらしい冤罪の物語一田 和樹

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2013/12/31(Tue) | 刑事事件 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
循環取引(契約書があっても架空)
弁護士石井琢磨です。

前回、法人のチェック機能のお話をした際、

企業不祥事の原因と対応策
弁護士が分析する企業不祥事の原因と対応策



という書籍を紹介しました。

※参考記事 『溶ける』のチェックシステム


『溶ける』の話は、資金移動自体は会計上も明記されていたという話でした。

しかし、企業不祥事の中には、会計上の記載が正しくないケースが多数あります。

たとえば、循環取引という手法。
これは、複数の企業を使い、商品販売やサービス提供を帳簿上繰り返すことで、架空の売上を計上する手法です。
関係会社の間で、取引をグルグル回して、全社売上が伸びたと見せかけるような手法。

その形態には色々ありますが、なぜこのような取引が起きてしまうのか。

循環取引の実務対応
循環取引の実務対応―予防・発見から法的紛争処理まで


という本があります。

循環取引の原因としては

・特定の取締役に権限が集中、取締役会や監査役等による監視機能が機能しない
・従業員レベルでも兼務すべきでない職務を同一人が兼務しているため、相互監視が働かない
・株価を気にしすぎ、売上を上げようとする

という点が紹介されています。


このような循環取引では、たいていは契約書類は整備され、会計記録、在庫などの記録も徹底して偽装されます。

見かけ上は、ちゃんとした取引があったかのように見せかけられているのです。


さらに、循環取引では、関係会社で話を合わせているので、通常の取引ではあり得ないような取引条件になっていたりします。

本の中で紹介されているものを一部紹介しましょう。

・手数料が通常の取引よりも著しく高い、あるいは低い
・支払いサイトでリスクを負わない条件となっている
・一方当事者に著しく有利な特約がある
・契約を締結する前に、最終需要者に対して目的物が納入済み
・時系列が不自然に前後している
・目的物である商品・サービスに関する記載が脱落したり、大ざっぱな記載となっている
・当事者間で商品についての説明が行われない
・大量の取引が行われているのに商品クレームが一度も生じていない
・業務やサービスの進捗状況を客観的に測定することが困難な取引(ソフトウェア開発等)


このような会社に第三者として関わる場合には、契約書類があったり、会計上の記載があったとしても、疑いの目を持つことが必要なのです。


循環取引の実務対応―予防・発見から法的紛争処理まで
循環取引の実務対応―予防・発見から法的紛争処理まで遠藤 元一

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2013/12/26(Thu) | 民事訴訟 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
『溶ける』のチェックシステム
弁護士石井琢磨です。

大王製紙の元会長、井川意高氏の『溶ける』を読んでいました。

熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録
熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録



カジノに総額100億円以上も注ぎこんだという。

多くが子会社からの借入ということで、特別背任罪による実刑判決が確定しています。


検察官は、これだけ大金が動いているのだから政治家への裏献金などがあると考えていたところ、

ぜんぶカジノ

だったので、拍子抜けしたそうです。

この本では、カジノから抜け出せない心理や、話題になっていたという芸能人との付き合い等も描かれています。


私が注目したのは、これだけの大金をどうして動かせたのか。

社長や会長であっても、個人と法人は別。
当然、チェック機能があったはずなのです。

資金の動きについては、名目はともかく、動き自体は隠していなかったそう。
つまり、子会社から井川氏への資金移動は、子会社の会計上にも明記されていたのです。

大きな金額なので、監査法人も気にしたはずです。

監査法人は


「経理担当者にそのことについて尋ねると、担当者は「井川の判断で事業活動の運転資金に充てている」という旨の返答をしたらしい。」
「その説明に納得し、さらに厳しく追及することはなかった。」



監査役


「大王製紙には常勤監査役が2名おり、そのほかに弁護士2名、元国家公務員1名による非常勤の社外監査役を置いている。監査役会が開かれたときにも、不正貸付についてのチェック機能は働かなかった。」



取締役会


「取締役会参加者の中には資金調達の事実を知っている者もいたのだが、その事実を言挙げすることはなかった。」




チェックの意味なし。


全部のチェック機関がスルーされ、お金はカジノに行っちゃったのです。

チェックのためのシステムがあっても、運用を失敗すると、こんな悲劇が生まれてしまいます。


『弁護士が分析する企業不祥事の原因と対応策』という本でも、この事件が取り上げられています。

弁護士が分析する企業不祥事の原因と対応策
弁護士が分析する企業不祥事の原因と対応策




事件の原因は、創業家一族のグループ支配からくる、絶対服従という企業風土だとしています。

それゆえに、取締役や監査役等の監視機能が働かなかったと。

オーナー企業だったからこそ、井川氏がガンガン経営して、業績を拡大できた側面もあります。
でも、過信するとカジノに持って行かれてしまう。

ガンガン行っているときこそ、チェックシステムを作ったり、それをしっかり運用する1%の疑いの目を持つことが大事なのです。

上場企業ですら、こんなんですから、中小企業の場合は、なおさら大事ですよ。


熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録
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2013/12/21(Sat) | | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
株価を予想しても当たらないので、NISAがらみ事件を予想してみる
弁護士石井琢磨です。

最近、本屋でも新聞でも銀行でも「NISA」という言葉をよく見かけます。

来年から始まる投資用の口座のことですね。

どんなものかと思って、本をチェックしてみました。

NISAにゅうもん ~5分でわかるもん 100万円を2倍にするもん~
NISAにゅうもん ~5分でわかるもん 100万円を2倍にするもん~




年間100万円までの投資について、利益を非課税にしてくれる制度です。
この口座を通して購入した株が、100万円から110万円に値上がりして売った場合、10万円が利益になります。

通常だと2万円が税金として持って行かれるのですが、NISAならこれがかからない。

一見、良さそうな制度ですが、デメリットも。


・損益通算がない。

利益はないものとして扱ってくれる一方で、損もないものと扱われます。


・5年後(または10年後)に購入価格がリセットされる。

非課税期間が過ぎた後に値上がった場合、そこには課税されます。


つまり、値下がりする株はダメ。期間内に大きく値上がりする株を買わないとメリットを活かせません。

5年以内に10倍になるような株に投資すれば、メリットがありますね。



って、それが分かれば苦労しない。

NISA以外の口座で利益を出すよりハードルが高い気がします。


みなさん、こういう制度が始まりますが、間違っても借金して投資しようなんて考えないように

日々、株やFXの失敗で、自己破産や個人再生などの相談を受けている立場からすれば、借金して株式投資というのは、失敗する確率が高いです。
背水の陣で水に落ちて溺れた、みたいな人ばかりです。


本の中では、著者の山田さんだけでなく、多数の方の失敗談が載っていますので、NISAで投資を始めようと考えている人はチェックしておきましょう。


新しい制度が始まることで、NISAの報道が来年にかけて増えると思いますので、便乗事件が起きてもおかしくないですね。こちらは注意を。

・「5年以内に上がるよ」と、ダメな投資商品を買わせる
・NISAもどきの商品を買わせる、「NICA」とか?
・「NISA口座に100万円を入金しましょう」と言って、違う口座に振り込ませる

あたりが想定されますね。
お気を付けて。



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2013/12/03(Tue) | 消費者問題 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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