裁判員裁判で提供される音声認識再生ソフトが意外に良かった件
弁護士石井琢磨です。

先日、裁判員裁判の記事を書きました。
関連記事:性犯罪の裁判員裁判

この裁判で、裁判所が提供している音声認識再生ソフトを初めて使いました。

CD



利用したことがある弁護士にとっては今さらでしょうが、その感想を残しておきます。


通常の裁判では、証人尋問の結果は、速記官や書記官によって書面にされます。
ただ、これには時間がかかります。
民事裁判などでは1カ月くらいかかることもあり、証人尋問の結果をふまえて最終の主張書面を出す、という場合、尋問から1カ月後に証人尋問調書が届き、「ああ、こんな尋問もあったなぁ」というノスタルジアチックな気持ちで、最終の主張書面を作成する、ということがよくあります。
刑事裁判でも似たような感じ。

ところが、裁判員裁判は、市民も巻き込んで一気に判決までするという制度なので、1カ月も待ってられません。
そのため、裁判員裁判開始時に出てきたのが、音声認識再生ソフト。
証人尋問の内容を録音して再生してくれるというソフトです。
NECにより開発されたというもの。

このソフトの話が出たとき、埼玉弁護士会では、こんなソフト使えねぇから書面作ってくれ、という会長声明が出されるなどしていました。
http://www.saiben.or.jp/chairman/2009/090518_01.html

こんな話を聞いていたので、このソフトにはまったく期待していませんでした。
尋問後に、証人尋問の結果を再生して聞いている時間などないだろうと。

ただ、今回の裁判では、一部の事実認定に争いがあったので、最終弁論で引用する証言などは正確にしたい。
法廷にPCを持ち込んでタイピングしていたのですが、加齢の影響によりタイピングスピードが衰えてしまっています。
要旨しか打ち込めませんし、自分が尋問している間は打ち込めません。
相方の伏木弁護士の字は汚くて読めない。

しかたなく、この裁判所のソフトを使ってみたのです。

このソフト利用時には、誓約書に署名させられます。
この誓約書の内容が、まあ大変です。
ソフトを利用している間、ネットにつなげないという制約があるのです。
関連記事:裁判員裁判の尋問DVDを借りる際の誓約書


メインパソコンでは使えず、古い放置されたパソコンを取り出して使ってみました。
まあ、そもそもソフトのCDに「ビスタ対応版」と書いてあるので、私のメインパソコンの「7」では動かないのかもしれません。

CD



このソフトのほかに、期日ごとにDVDにデータを書き込んでもらい、それをソフトに取り込みます。

すると、尋問ごとにデータが作成されます。
聞きたい箇所のデータを開くと、

入力マイクの人物と時刻が記載され、大まかな質問・回答の流れがわかります。

尋問



自動に文字変換をしてくれているので、期日に控えたメモと照らし合わせれば、引用したい箇所の証言はすぐ見つかります。

「あの裁判員とのやりとりを確認したい」という場合には、質問者で調べればすぐ辿りつけます。
一応、再生速度の変更も可能。

再生速度





極めて実用的だと感じました。



予想以上の使い勝手だったので、思わず事務所の弁護士の仕事を中断させ、すごさをアピールしてしまいました。


民事裁判の尋問でも、最終準備書面の準備ならこれで十分なのではないかとも感じました。


尋問後にいちいち証言の音声を聞いていられないという理由で、裁判員裁判の登録を避けている、という弁護士さんには、一度このソフトを使ってみてもらいたいです。



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2013/03/12(Tue) | 刑事事件 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
性犯罪の裁判員裁判
弁護士石井琢磨です。

2月下旬から日中に事務所を不在にする日々が続いていました。

裁判員裁判があったためです。

この判決が出ました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130308-00000001-kana-l14


事件は、強姦致傷のほか強姦等性犯罪3件、住居侵入窃盗等。
示談・被害弁償は残念ながら一切できず。
謝罪文もほとんどの事件で受け取り拒否。

検察官の求刑が懲役22年
被害者参加人の意見は、できるだけ長い刑

弁護側の求刑が懲役9年程度



判決は、懲役13年
でした。



裁判員裁判が始まる前は、求刑の8割程度が相場と言われていたことがあります。
22年の8割だと17年半程度
裁判員裁判が始まり、性犯罪事件の量刑は重くなったとの報道をよく見かけました。
求刑どおりの判決や求刑を上回る判決を報道で見ることもあります。
実際に私も被告人の逮捕直後からそのように厳しい見通しを伝えていました。

検察側の求刑を基準にしてしまうのは危険な発想ではありますが、
求刑に引っ張られるという現実を前提にすると

求刑の6割を下回る判決は、被告人にとっては有利な判断でした。

私たちは被告人の弁護ですので、ちょっとほっとしています。



なぜ、このような判決がなされたのでしょうか。

おそらく市民から選ばれた裁判員が、被告人が更生すると信じてくれたからです。

報道記事では被害者の処罰感情を指摘しつつ、

一方で、「性犯罪の常習性はさほど根深くなく、反省の念を深めつつある」として再犯可能性は相当低下していると判断。「今後の教育次第で十分更生が期待できる」として情状を酌量した


と記載されています。

裁判員の意見が反映されたものと思います。

今回の裁判員は、全員が被告人に対して、質問をしていました。
その中には、鋭い質問、被告人にとって有利なエピソードを引き出す質問もありました。

私たち弁護側が事前にそこに気づけよ、という話ではありますが、接見室で延々と質問を続けたときと、公開法廷でバーッと目の前に並ぶ裁判官・裁判員から質問されたときとでは、答える側の脳の使い方が違うようです。
法廷でだけ入るスイッチがあるのですよ、たぶん。

同じ内容の質問なのに、事前の打ち合わせでは出てこなかった言葉が引き出されていました。

裁判員に選ばれた方は、なかなか質問しにくいと思います。
私が法律関係者じゃなくて、裁判員に選ばれてしまったら、質問も発言もできないと思います。

しかし、今回の6名の方は、積極的に質問をしてくれていました。
裁判員に選ばれた6人の中に、積極的に質問をしていく人がいると、他の裁判員も質問しやすくなるようです。

裁判長の最後の質問の後にまで、追加で質問をしている方もいました。

事件内容の質問以外にも、被告人がなぜ事件を起こしてしまったのか、今後、どういう点に気をつければ良いのか、という点を突っ込む質問もありました。質問というより助言に近い指摘も。


人間は受ける言葉で変わります。

裁判員裁判の数日間で、彼も新しい視点を手に入れたようでした。
私が9カ月間、言い続けてきても辿りつけなかった視点に数日間で・・・


しっかり質問をしてくれた裁判員のみなさんの勇気には感謝したいと思います。


私の担当パートである最終弁論では、裁判員のみなさんの質問を有効に使おう、という気持ちで裁判員の方が引き出した情報を積極的に含めました。

今回の最終弁論では、法廷に備え付けられたスクリーンを利用して簡単な項目のみパワーポイントで表示しました。
その理由のうち3割くらいは、被告人のため

もちろん、弁論は、結論を決める裁判官・裁判員に向けておこなうものです。
ただ、今回の裁判では、裁判員の質問の中に、被告人に対するアドバイス的なものが多かったので、その情報を所々に織り交ぜて、被告人にまとめて伝えるという効果を狙いました。

被告人も、弁論を耳からだけで聞くのと、目からも一定の情報が入るのでは、脳への刺激が多少は違うだろうと。
10年後に、この弁論の一部でも彼の中に残っていてくれたら良いのです。


市民がこれだけ集まってこれだけの時間を使ったのだから、しっかり更生してほしい。

裁判員の言葉が、今後の彼の人生に少しでも残ってくれることを願います。


判決後、彼と最後の面会をしてきました。
逮捕後から読書を始めたという話でしたので、「本は人生を変える!」と熱く語ってしまいました。
「小説で活字に慣れたら、ビジネス書を年間300冊読め、そして出所後、その知識を仕事に活かせ!」とアドバイスをしておきました。

餞別に熱い小説を差し入れておきました。
風が強く吹いている (新潮文庫)
風が強く吹いている (新潮文庫)




みなさんも裁判員に選ばれた際には、おそれずに質問、発言するようにしてくださいね。
それが誰かの人生に良い影響を与えることもあるのです。


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2013/03/08(Fri) | 刑事事件 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
弁護士の流動性が高まっている
弁護士石井琢磨です。

先日、弁護士会支部の新入会員歓迎会に出席しました。

神奈川県西部に新しく入った弁護士は5名だそう。

久しぶりに支部の集まりに出席して感じたことは、

弁護士の流動性が高まっている

ということです。



ある事務所にいた弁護士が独立したり、他事務所に移籍したりすることが増えた、と感じました。

私が弁護士になって間もない時期には、独立はともかく、支部の事務所間で移籍というケースは滅多にありませんでした。
ある弁護士の移籍があったとき、支部の弁護士から「移籍なんてすごいですよね、聞いたことないです」と感想を聞きました。

私は、弁護士の数が増加傾向にあったことや、当時、ヨーロッパのサッカー観戦を趣味にしていたことから、
「サッカーと同じで、移籍なんて珍しくなくなる、今後はトレード、事務所間の合併も増えるんじゃないか」と発言していました。

トレードはまだありませんが、他の支部では合併のようなこともありました。弁護士の事務所間での移籍は増えています。

供給量が増えれば、流動性は上がります。


これは弁護士を利用する皆さんにとっては何を意味するのでしょうか?


事件の相談をしていた弁護士が、その事務所からいなくなる、他地域に移る可能性が高くなったということです。

その弁護士に引き続き相談をする場合、他の地域まで相談に行かなければならなくなるかもしれませんし、そもそも他の弁護士に相談をするしかなくなることもあります。

弁護士の数が増える、という問題に、「質が下がる」とか「食えない」とかいう弁護士側だけの反論が目立ち、
市民側からは、「そんな贅沢言ってるんじゃねえ」という意見が目立っていると思います。

もちろん、弁護士が増えれば、最初の段階でのアクセス可能性は高まるメリットはあります。しかし、同じ弁護士にアクセスし続けたい、という継続性という点では、デメリットになります。


相談している事件が裁判になったりすると、年レベルで時間がかかります。
相談している弁護士が裁判の最後まで担当するのかどうか、これは誰にもわかりません。
移籍してしまう可能性もあるのです。

もし、解決までに時間がかかる事件を同じ弁護士に担当してもらい続けたいのであれば、頼む段階で、弁護士が変わらない確率を上げないといけないのです。

支部の集まりなどで、「なぜその場所で弁護士活動をしているのか」という質問をしても、面白い答えが返ってくることは少ないです。
私も含めて。

「なんとなく」とか「誘われたから」とか「支部の方が稼げそうだから」などとつまらない理由が多い。
もちろんマーケティングは重要でしょうが、それが前提だと、前提が崩れたとき、その弁護士は他地域に移ります。

なんとなく神奈川で働き始めた場合、なんとなく沖縄に移動するということがあり得ます。
稼げなくなったので、もっと地方に行く、のようなことがあり得ます。


相談を受けたとき、「先生、厚木高校なんですよね?」と聞かれることが結構ありました。

相談者側は本能的に、弁護士がその地域からいなくなるリスクを量っていたのかな、なんて思いました。


まあ、出身地から人が動かないという訳でもないのですけどね。
厚木で生まれ育ち、厚木高校に通っていた私の先輩は、「来週からニュージーランドに移住するんだ」と言って、突然去っていきました。
相模川法律事務所も突如「ワイカト川法律事務所」として移転するかもしれません。



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2013/03/05(Tue) | 弁護士日記 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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