たまに相談を受けることがある携帯電話の2年しばり。
解約可能時期以外に解約した場合の解約金について、消費者契約法違反でないかと争われた事件です。
NTTドコモの解約金について、今月29日、京都地裁はこれを消費者契約法違反ではないと判断したそうです。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20120329ddm041040124000c.html
記事によると
判決は、解約1件当たりのドコモの損害額を、基本料金の平均割引額2160円に中途解約までの平均利用期間14カ月をかけた3万240円と認定。「解約金はこの額を下回り、違法ではない」とした。
とのこと。
消費者契約法では、高額過ぎる違約金を規制して消費者を保護するため、「平均的な損害の額を超える」違約金の契約条項は、超える部分について無効としています。
では、「平均的な損害」ってどうやって決めるのよ?
という点が、色々な紛争で問題にされるわけです。
平均額を超えている場合には、違約金条項があっても平均額に制限されます。
いくつか事例を見てみましょう。
パーティー2ヵ月前の解約で飲食店の損害を1人あたりの料金の2割に制限(東京地裁平成14年3月25日判決)。
建築前の請負契約解除で工事業者の損害を10万円に制限(東京地裁平成18年6月12日判決)。
タレント養成契約について芸能プロダクションの損害を実際に負担した写真代1万2600円に制限(東京地裁平成20年4月25日判決)。
このように、いろいろな業界で問題になっている条項です。
そんな条項について、携帯電話では初めての判決。
今回の判決では、平均的割引額と平均利用期間から算出したとのこと。
控訴する方針とのことで、この算出方法が維持されるか今後も注目です。
- 関連記事
-
- 探偵トラブル
- セブンクリック詐欺
- 携帯の解約金を合法とした裁判例
- フランチャイズ詐欺
- 出会い系サイト詐欺被害対策マニュアルの注意点
昨日の日経新聞で、電子マネー投資事業の詐欺事件の報道がありました。
勧誘した投資対象が電子マネーというだけであり、異常な高配当をうたって現金を集めるタイプの事件のようです。
記事によれば、告訴状における勧誘文句は「すごい電子マネーを開発した。1口50万円を出資すれば、半年後に6068円の配当が毎日出る」などというもの。
これだと、1ヵ月半の配当で出資元金が回収できる説明です。そりゃすごい。
違法行為をして逮捕リスクを負っているヤミ金融ですら10日で1割の利息を回収するのに苦労しているわけですからね。
「L&G」の円天詐欺では「使っても減らないお金」と勧誘されていました。
リアル世界ではあり得ないことも「電子」の中の世界だとあり得ると考えちゃうかもしれませんね。
電子マネーと言っても、物と物の交換に使われる価値です。
貨幣とは何かを考えていくと、利益を得られる場面がどのようなものに限られるかわかるはずです。
貨幣進化論―「成長なき時代」の通貨システム (新潮選書)

- 関連記事
-
- 生活保護がなくて死ぬ
- スマートフォンのクリック詐欺
- 電子マネー投資詐欺
- 国会図書館サーチ
- 偽名の健康保険証
以前、本を読まない友人が、何度も読んだ自己啓発書として『7つの習慣』を挙げていました。
7つの習慣―成功には原則があった!

その友人は、結婚直前に、
「結婚は、価値観が違う人間同士が一緒に生活するんだから、お互いの価値観を認めないとうまくいかないだろう」
と発言。
私は、新婚生活に過大な夢を描いていない友人を見て、すごいと感じました。
その『7つの習慣』の著者が、『第3の案』という新刊を出しました。
第3の案 成功者の選択

これを読んで、友人の発言は、『7つの習慣』から影響を受けていたものだと知りました。
『第3の案』は、『7つの習慣』の一部の考え方を具体化させたもの。
タイトルのとおり、「Aか?Bか?」という二者択一思考に陥っている際に、全く異なる第3の案に到達し、WIN-WINの関係をつくるというものです。
二者択一思考が行き着くところとして、法律業界の話が出されていて耳が痛いところです。
離婚裁判では、夫婦がお互いに不満をぶつけ合ってしまうシーンがあります。
とにかく相手を責める。
ある離婚裁判の証人尋問で、裁判官が夫に対して
「あなたは妻を責めるけれども、結婚生活がうまくいかなかった原因について、自分にも至らなかった点はあると思いますか?」
という質問をしたことがあります。
夫は「一切ありません」と発言し、裁判官が絶句していたのを思い出します。
法廷では、悪いのは、自分か?or相手か?という思考になりやすい。
よほどの違法行為があれば別ですが、離婚では、お互いに至らなかった点があるのが普通でしょう。
『第3の案』でも触れられていますが、離婚原因の第1位は「性格の不一致」です。
しかし、不一致なのは当たり前。
私がある既婚者の弁護士に「この事件で、夫婦関係がうまくいってなかったのは何でなんだろう?」と質問をしたところ、
その弁護士は「うーん、特定は難しいかもしれませんね。夫婦ゲンカのネタなんて、うちでもいくらでもありますからねえ」
と言っていました。
ある弁護士の家庭では、真冬なのに配偶者が窓を開けて寝ていたことがケンカの原因になったとか。
部屋の気温ですら、争いの原因になるのです。
寒すぎる、暑すぎるという二者択一思考だとケンカが絶えません。
ここから抜け出すには、まず、二者択一思考がどこから来ているのかを考えることが必要です。
『第3の案』では、
家族の対立のほとんどは、根本的にはアイデンティティの対立である。自尊心が脅かされていると思うと、相手の自尊心を攻撃する。
と述べています。
相手を責めるような発言は、実は相手を責めるものではなく、自分の自尊心を守るためのもの。
具体的なエピソードを引用します。
「妻が「ここは寒いわね」と言うと、夫はにわかにイライラし、「お前、どうかしてるんじゃないか?二〇度もあるぞ!」と言い返す。妻が寒いと言ったことを、夫としての自分の性格や能力に対する攻撃と受け止めるのである。「妻が寒いのは私のせいなんだ。私は妻を幸せにしてやれず、妻を寒さから守ってやれなどと思ってしまうのだ。彼は自分を守るために、寒いわけがないじゃないかと、妻の感覚を疑問視するようなこと言う。「こうして二人は互いに相手から見下されたと感じる。どちらも相手を見下すつもりなどないにもかかわらず」 ここから事態は悪化の一途をたどり、罵り合いとなる。
まさに、多くの離婚事件で、このような罵り合いが発生しています。
自分が相手を罵ってしまった場合、その二者択一思考がどこから来ているのかを知るだけでも、新しい選択肢に近づけるでしょう。
どこから来ているのかを知れば、冷静さを取り戻せ、反応を変えることができるかもしれません。
本書では、自分がどのように反応するかは、自分で選べる、と言います。
これは、自己啓発書でよく取りあげられる話です。
さらに本書では、これを実験結果で裏づけています。
「家庭内暴力の加害者が衝動を変化させる手助けをしてきた。」というスティーブン・ストスニー博士の話が紹介されています。
「愛する人を傷つければ、自分は愛される人間になれる、そんなふうに考えた人が人類史上いるだろうか?」と彼は質問する。患者はこうして、自分自身を良く思えるようになる方法は、暴力ではなく思いやりを選択する以外にないことに気づく。
次にストスニー博士は、集中的な訓練で暴力のサイクルを断ち切らせる。患者は約一ヵ月にわたり、頭の配線を思いやりに組み直すための七五○種類の訓練を行う。毎回、対立の場面が提示され、患者は実際に求める結果を思い描き、親切な気持ちで反応する。訓練を終えると、患者は過去の習慣的な反応を克服し、新しい「頭の筋肉」をつくる。こうして思いやりが習慣になる。
反応は、筋肉で変えられる。
思いやりは習慣である。
この訓練が手軽にできるようになれば、DV事件が激減するでしょう。
それだけではない。
二者択一思考の典型例として、犯罪があります。
刑事事件の現場では、「なんでそんな発想になっちゃったの?」と関係者全員がつっこむことがあります。
犯人は、「殺るか、殺られるか」のような狭い二者択一思考になってしまっている。
その前にワンクッション入れられれば、犯罪は減ります。
薬物から抜け出せない、盗みグセが治らないといった悩みも、筋肉で変えられる可能性はあります。
『第3の案』でも、結婚生活以外に多数のシーンを取りあげており、犯罪防止についての記述もあります。
この訓練がDVDやスマートフォンのアプリ化されて、ビリーズブートキャンプのようなブームになれば、社会はきっと良くなる。
自分の感情をしっかりコントロールしたい人は読んでみてください。
第3の案 成功者の選択 | |
![]() | スティーブン・R・コヴィー ブレック・イングランド フランクリン・コヴィー・ジャパン キングベアー出版 2012-02-25 売り上げランキング : 808 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
- 関連記事
-
- 紙の本をいきなり裁断して失敗した例
- 私が、紙ではなくiPadで本を読むようになった3つの理由
- 『第3の案』 筋肉を鍛えれば夫婦ゲンカは減る
- シャアに学ぶチームづくり
- その証言では軽すぎます!
最近、車担保金融の相談が増えてきたので、裁判例を紹介しておきます。
まあ、ヤミ金のことです。
普通に、高い利息でお金を貸すと、ヤミ金であるとバレバレなので、車を担保にする、と見せかけるわけです。
多くの事例では、車を担保にするといっても、借主は、そのまま車に乗り続けることができます。
車をヤミ金業者に売却して、ヤミ金業者からリース名目で借りて、リース料を払う。
ヤミ金業者以外に関連会社のリース会社が入ることもあります。
売買代金名目で受けとったお金とリース料から計算すると、
ヤミ金からお金を借りたのと同じような暴利になっていて、車の売買は仮装、実態はヤミ金、というものです。
このような仮装をしていても、裁判所は実態がヤミ金の業者に対しては厳しい判断をします。
さいたま地方裁判所平成23年9月7日判決(消費者法ニュース90号)では、
車の売買を仮装したヤミ金を利用し、借主が自殺してしまったケースについて
店長、従業員、中古車販売業者、全員に対して死亡についての賠償責任を認めました。
貸金業登録の名義を貸した従業員や
宣伝用看板の設置を担当した従業員も
共同して賠償責任があると認めています。
自殺との関係について
「脅迫的・強圧的言辞を用いなくても債務者を精神的に追い込み、」・・・
「勤務先に取り立ての電話をしたり、自宅訪問を予告したりしていたのであるから」・・・
「精神的に追い込まれて自殺すると予見することは十分可能であった」
と具体的な脅迫行為の有無にかかわらず、ヤミ金でおこなわれる通常の取り立て方法だけで
自殺についての賠償責任を負わせています。
ヤミ金で働いたがために、6000万円以上の賠償責任を負わされる。
車担保金融でお悩みの方は、ヤミ金で働く人たちにこの話を教えてあげて、足を洗わせてあげましょう。
消費者被害事件では、弁護団を組むことがあります。
消費者事件の場合には、被害者がたくさんいるため、1人の弁護士だけで全員から事情を聞くことができず、何人もの弁護士に担当被害者からの事情聴取などを割り振って対応することがあるのです。
1人で実現できないことでも、複数人なら実現できる。
そのためにはチームや組織が必要です。
集団の力がすごいことは確かです。
しかし、これをうまく機能させるのは大変だったりします。
私が勤務弁護士だったころ、ある先輩弁護士から言われました。
「勤務弁護士はストレスがあると思うけど、
独立して一人でやってもストレスはあるし、
人を雇ってもストレスはあるし、
何人かでやってもストレスはあるんだよ。」
チームや組織を作るにも「自分でやった方が早い!」などとストレスを感じることもあるでしょう。
弁護団のようなチームでも、事件解決まで何年もかかると、裁判や弁護団会議に来なくなる弁護士も出てきてしまうことが多いです。
会社という組織でも同じような問題はあり、社長と従業員との間には埋まらない溝があります。
私、社長ではなくなりました。 ― ワイキューブとの7435日

チーム作り、組織作りに関する問題は根が深く、これらの問題を解決する本はたくさん出版されています。
そのジャンルにおいて、衝撃的な本が出ました。
シャアに学ぶ“逆境”に克つ仕事術

過去に、このブログで『ガンダムが教えてくれたこと』というビジネス書を紹介しました。
参考記事:「ガンダムに騙されるな!」
その続編だそうです。
「仕事術」というタイトルが付いていますが、ガンダムの敵役であるシャアから、チームや組織作りに役立つ学びを得ようという変わった本です。
過去の記事でも触れましたが、私はガンダムの知識が乏しいので、シャアと言えば、主人公のライバルだというくらいの認識しかありません。
しかし、ガンダムの続編である『Zガンダム』において、シャアは、カミーユという主人公を教育し、エースに育て、組織作りを成功させているそうです。
かつて、ワンマンプレーヤーだったシャアが人を育て、組織を作る。
これだけでも衝撃を受けましたが、一番の衝撃は、Zガンダムの主人公であるカミーユが、当初やる気がないキャラであったという点でした。
カミーユは「自分ががんばらなくても大丈夫」という認識で、甘ったれ。一流のパイロットになりたいわけでもない。
才能があるのに、やる気のない新人を育てるために、シャアが取った方法が紹介されています。
たとえば、
「そんなことをしてはダメだ!」
と怒りつけるところを、
「そんなことをしていると、今度は君が死ぬ番だ」
と相手の目線で言う。
こんなシャアの言動がたくさん紹介されています。
チーム作り、組織作りに悩んでいる方は、楽しみながら役立つ知識を学べるでしょう。
本書が、類書と何よりも違うのは、本に書いてあることを実践するときに、恥ずかしければシャアのせいにできるということです。
たとえば、カミーユが成果を上げたときにシャアは「君こそよくやってくれた」と褒めることを忘れない。
中小企業の社長の中には「そんなセリフ言えるか」と思う人もいるでしょうが、そんなときは、
「このセリフを言っているのは自分じゃない、自分の中のシャアだ」
とシャアというキャラクターのせいにできます。
キャラクターを通して学ぶことには、このような意義があるでしょう。
チーム作りに悩んでいる方はぜひ読んでみて下さい。
私自身には、ピッコロが孫悟飯を荒野に放置し「たったひとり、ここでぶじに生きのびてみろ」と言ったような教育キャラしか入っていなかったので、本書で新しいキャラを植えつけられそうです。
DRAGON BALL 18 (ジャンプ・コミックス)

- 関連記事
確定申告時期を終えた友人の税理士と飲んだら、テーブルにシャンパンを注がれて身も心も引きました。
さて、弁護士と紹介料について、問い合わせを受けたので書いておきます。
うちの事務所では、依頼者や他の士業の方から紹介を受けて、相談に来る方もいます。
そのような場合でも、紹介者に対して紹介料を払うことは一切ありません。
問い合わせをしてきた方は、
「紹介で法律事務所に相談に行ったら、法律事務所から紹介者に対して紹介料を払う、
それが自分の弁護士費用に上乗せされるのではないか?」
と心配したようです。
当事務所では、紹介料を払うこともありませんし、上乗せをすることなど一切ありませんので、ご安心ください。
そもそも、弁護士職務規程では、紹介料を払うことも受け取ることも禁止されています。
第13条 弁護士は、依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その他の対価を支払ってはならない。
2 弁護士は、依頼者の紹介をしたことに対する謝礼その他の対価を受け取ってはならない。
紹介料を報酬としてもらう目的で業として弁護士紹介活動をすると、弁護士法72条違反になる危険があります。
弁護士業界として紹介料がかかるという話は、本来ないはず。
万一、紹介料の上乗せなどしていたら、それは職務規程違反をしているということですから要注意。
もちろん、紹介をしていただくことは非常にありがたいことです。
金銭でのお礼はできませんが、紹介者の方には感謝し、足を向けて寝ないほか、年一回の勝訴祈願の際には、紹介をしてくれた方の顔を思い浮かべて、勝訴を祈っています。
- 関連記事
-
- 『宇宙兄弟』と意思疎通
- 奨学金を借りる前に考えておきたいこと
- 弁護士の紹介料
- 備忘録2011
- 自炊議論
周囲に起業する人が増えてきました。
起業の際に、フランチャイズを利用する人も多いでしょう。
フランチャイズで起業したものの、経営がうまくいかず、フランチャイザーの説明が不十分だった等と主張して損害賠償請求をするケースは多くありました。
起業したいと考える人が増えると、この問題がまた多く出てくる可能性があります。
裁判でよく問題になるのが、
フランチャイザーの売上予測があまりにも適当だというケース。
これを含めて、フランチャイザー側の情報提供が不十分な場合、情報提供義務違反だとして、フランチャイザーに対して損害賠償請求が認められます。ただ、認められる場合であって、フランチャイジーも事業者ですので、自己責任の部分もあるとして、過失相殺され、損害額が減るケースがほとんどです。
多くの場合、3~40%は減額されますし、80%減額というものもあります。
フランチャイズに関する訴訟には、このように過失相殺されるような事案以外に、フランチャイズに絡んだ詐欺事案が増える可能性もあります。
過去には、
一定の地域で店舗物件の確保が困難なのに、これが容易だと説明し加盟金を受領、期間内に開店できない場合には加盟金を没収するという条項を契約書に盛り込んだフランチャイズが詐欺だと認定されたケースがあります(東京高裁平成21年12月25日判決)。
このケースでは、通常のフランチャイズ契約では使わないような条項が契約書に入れられていたことから、事業を始めてすらいないのに加盟金を取り返すために大変な時間と労力がかかっています。
おそらく今後、同じように、契約書に一文を潜ませるようなケースが増えていくと思います。
また、そもそもフランチャイズと呼べないような悪質商法も増えてきています。
法律上、事業者の皆さんは、一般消費者よりも知識があると位置づけられており、その分、保護は弱くなります。
契約の際には気をつけてください。
- 関連記事
弁護士が増えてきた影響からか、他の弁護士が担当していた事件を引き継ぐことが以前よりも多くなってきた気がします。
そのなかで、
結果が出ているのに顧客満足度が低い弁護士と
結果が出ていないのに顧客満足度が高い弁護士
がいることに気づきました。
結果が出ているのに顧客満足度が低い弁護士の中には、依頼者へのプレゼンに失敗していることがあり、非常にもったいないと感じます。
やるべきことをしていて、十分な弁護活動なのに、なぜか依頼者から信頼されない。
原因の中には、依頼者への説明が不適切だったり、不十分だったりするケースもありますが、最も気をつけるべきは、依頼者に与える印象ではないでしょうか。
依頼者・相談者は、弁護士の話す内容だけではなく、話し方、動作等から受ける印象も含めて、弁護士を信頼できるか判断しています。
ときには、弁護士の瞳孔の動きまで観察している相談者もいます。
弁護士として活動する以上、これらを意識する必要があります。
『その話し方では軽すぎます!』という本を読んで、なおさらそう感じました。
その話し方では軽すぎます! エグゼクティブが鍛えている『人前で話す技法』

本書は、NHKのキャスターであり、スピーチやメディアトレーニングもしている矢野香さんの一冊。
信用されるための自己演出方法について書かれています。
まず相手に与えたい印象を決め、それに適した話し方・言動をする方法が紹介されています。
それとともに、やってはいけない話し方・言動も紹介されており、参考になる一冊です。
私たち弁護士自身にとって、依頼者・相談者とのやりとり以外に、
依頼者を証言台に立たせるときにも役立つ内容です。
証言台で発言させる際、どのような印象を与えたいのか考え、現実とのギャップを埋める方法がわかります。
意識したい具体的なポイントを1つ引用してみましょう。
「話す内容」の改善ポイントとして、「事実と感情を分ける」というものがあります。
話の内容を事実と感情とに分けて、「感情部分の発言は削除する」こと
自分のトラブルで証言台に立つと、これを実践するのが難しい。
感情だらけの証言になることもあります。
もちろん、特定の部分で感情を全面的に出すことがプラスに働く場合もあります。
ただ、多くの場合、事実を証言してもらいたいのに、感情が混ざった評価として証言してしまうことで、相手方からつっこまれたり、証言が信用できない、と判断されたりしてしまいます。
質問「そのお金はどこから借りたのですか?」
回答「私のちょっとした知り合いなんですけど。良くない知り合いの人なんですけど」
この回答には、いらない部分がたくさんあります。
「良くない」という部分は評価であり、質問に対する答えとしては余計なものです。
また、「ちょっとした」という部分も、怪しさを匂わせる評価部分。
そもそも「けど」という言葉を付けてしまっていることで、後ろめたい何かがあるように思えてしまいます。
こんなことを繰り返すと、証言の価値を下げてしまいます。
そんなことがないように、証言台に立つ前に読んでもらいたい一冊です。
- 関連記事
知人が出会い系サイトで出会って結婚したという話を聞いて、驚いています。
この業界にいると、出会い系サイトは、すべて出会えない系サイトのように思えてきます。
いわゆるサクラ問題です。
異性とのやりとりかと思ったら、実はサクラとのやりとりでポイントや手数料が消費されていく詐欺事件です。
さらに出会いではなく「お金をもらえる」と言われてやりとりを続けてしまう事件もあります。
この類の相談はしょっちゅうあります。
ポイントや手数料などが、クレジット会社などから請求されて、家族に発覚。
家族が本人を連れて相談に来るというケースが非常に多い。
しかも複数サイトを利用していることがほとんどです。
被害回復のための活動上、詐欺だと証明することより、そもそも相手が誰か?を特定するのに苦労させられます。
クレジット会社のほか、決済代行会社を利用しているケースもあり、もとのサイト運営業者がどこだったのか?
にたどり着くまで時間がかかります。
支払方法を銀行振込にしている場合は、「口座を犯罪で使っている」という申告をすることで凍結することができ、業者からあわてて連絡が入り解決につながることが多いです。
しかし、決済方法に他の会社を挟んでいると、本体にたどり着くまで時間がかかるのです。
この点は、多くの法律家が苦労している問題です。
消費者法ニュースのような専門誌にも、どうやって本体にたどり着くか、という特集が組まれたり、
各地で弁護団が結成されていたり、
『出会い系サイト詐欺被害対策マニュアル』のような本まで出されています。

この本を早速購入して事務所内の全弁護士に配布しました。
出会い系サイト運営業者の情報を公安委員会から教えてもらう方法や、ドメイン管理業者に連絡してサイト自体の利用停止措置を求める方法などが掲載されていて参考になります。
ただし、問題がひとつ。
この資料代を、発行している団体に振り込んだところ、預金通帳に次のような記載がされています。

「デアイケイ.アダルト」への振込。
ものすごく疑われそうですが、「出会い系・アダルトサイト被害対策会議」名義の口座に振り込んだだけです。
みなさん、気をつけてください。
- 関連記事
-
- 携帯の解約金を合法とした裁判例
- フランチャイズ詐欺
- 出会い系サイト詐欺被害対策マニュアルの注意点
- 税務署が生活保護費を差押え
- 「牛乳あげます」詐欺
広告につられて、話題になりそうな『私が弁護士になるまで』を読みました。
私が弁護士になるまで | |
![]() | 菊間 千乃 文藝春秋 2012-01-13 売り上げランキング : 281 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
元フジテレビアナウンサー菊間千乃さんが、タイトルどおり「弁護士になるまで」の軌跡を描いた一冊です。
なかなかすごい話でした。
アナウンサーを辞めて、法科大学院に入り司法試験を目指すこと自体、すごい話です。
フジテレビのアナウンサーという仕事をしていてさえ、将来がどうなっているか見えず不安、自分の成長にも疑問を感じていたそう。
そこから一歩を踏み出す勇気、これまた不安を抱えながらの勇気は素晴らしい。
一歩を踏み出せないでいる人にはぜひ読んでもらいたい。
また、メディアなどで取り上げられがちな、仕事と両立しての勉強。これもすごい話です。
勉強開始当初は、アナウンサーの仕事と両立していたため、睡眠時間3時間で勉強を続けていたそうです。
睡眠時間3時間というのがインパクトある数字だからメディアでも取り上げられがちですが、個人的には、絶対にマネしてはいけないと思っています。
睡眠を削っての勉強は、経験上、非効率です。
菊間さんも、その後は、移動時間を減らし、睡眠時間6時間をきっちりとる生活に変更されています。
私も司法試験受験時は、6時間睡眠を確保していました。
3時間は、まあ、意気込みのすごさ、としてだけ受け取っておくべきものでしょう。
これらの点もすごいと感じましたが、もっともすごいと感じた点は、
受験時の過ごし方。
数日間つづく司法試験受験の際に、菊間さんはホテルに泊まったそう。
これは分かります。
私も、3日以上続く論文試験、口述試験は会場近くにホテルを取りました。
移動時間がもったいない、移動でエネルギーを使うのはもったいない、交通機関停止のリスク回避がその理由でした。
しかし、菊間さんのすごい所はここから。
事前におこなわれた模試の段階で、同じホテルに試しに泊まっている。
そこで、ホテルの机やスタンドが勉強に不適切であると知るや、
本番の際には、
折りたたみ式の机と電気スタンドをホテルに持ち込んだ
そうです。
電気スタンドはともかく、
机!?
机って、ホテルに持ち込んで良いものだったんですか。
たしかに、ビジネスホテルの机は狭い。
数冊の本を広げたり、六法を広げたりして勉強するには適していない。
でも、だからって、机を持ち込む人がいるとは。
この時点で、菊間さんの大胆さに圧倒されていましたが、
さらにホテルでの記述が続きます。
一週間の滞在に付き、段ボールを九箱持って行った
教科書は全部、この一年間自分が書いた答案、予備校の教材、ロースクールのレジュメなどなど。ホテルに入ってから、急に、あれなんだっけ?と思ったときに、手元に資料がないのは不安だし、そんなことでイライラするくらいなら、全部持ってっちゃえと・・・。
引っ越し!?
段ボール9箱って、私が一人暮らししていたときの荷物量より多いです。
ホテルにこれだけの荷物を持ってっちゃえ、と思いつけるところがすごいです。
それだけ数日間つづく受験時の環境調整に力を入れていたということですね。
これがあっさりできるというのは、マスメディアの現場で働いていた経験も無関係ではないでしょう。
私たちの常識から考えられない行動ができる経験が、司法業界に新しい発想をもたらしてくれると、楽しくなりそうです。
あとは、本書を読んで、司法試験受験生が、今後ホテルに大量に荷物を持ち込むことが急増し、ホテル界から規制されないことを願っています。
- 関連記事
-
- 偏差値35から弁護士に受かる記憶術
- 弁護士から見ても菊間千乃さんの司法試験受験法がすごかった件
- 本:1日3時間で難関試験に受かった方法
- 集中力を取り戻す3つの方法
- 1日2時間の勉強で司法試験に合格する方法?