残念!最判平成23年10月25日デート商法の場合
弁護士石井琢磨です。

デート商法事案で、売買契約とクレジット契約の関係について、平成23年10月25日、残念な最高裁判決が出されました。

デート商法は、恋愛感情利用して商品を購入させる悪質商法。
若者がターゲットにされやすいです。

購入者が商品を買えるだけの現金を持っていないことがほとんどで、クレジットが利用されます。

法律上は、売買契約とクレジット契約は別。


091013










悪質な売買契約の事情を、クレジット契約にも影響させられないか、という点が問題になります。


今回の事案では、被害者がクレジット会社に対して支払ったお金を返すよう請求できないか、という点が争われました。

前提として、売買契約は、デート商法の勧誘がひどいので公序良俗違反により無効。


最高裁に来る前の高等裁判所段階では、売買契約とクレジット契約は「一体的な関係」
なので、売買が無効ならクレジット契約も無効。

だから、クレジット会社に対して、払ったお金を返せと言える。

と判断されていました。


しかし、今回の最高裁は、形式的には2つの契約は別、特段の事情がない限り、クレジット契約は無効にならない

と判断して、クレジット会社に払ったお金は請求できないとしました。
消費者契約法も時効。


悪質会社が、商品を売った後に逃げた場合、支払ったお金を取り戻すのは難しい、という結論。
消費者保護から一歩遠ざかる残念な判断です。


消費者としては、被害に遭ってから相談に動き出すまでのスピードがますます重要になりました。


時間が経てば経つほど武器が消えていく。そう考えましょう。


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2011/10/30(Sun) | 消費者問題 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
食中毒事件における過失の認定
弁護士石井琢磨です。

以前に食中毒と業務上過失致死の裁判例についてブログを書いたところ、問い合わせを受けたので補充しておきます。


まず、前提として、

実務においては、「過失の認定は難しい」といわれている


のです。
『過失の認定』(東京法令)より


過失犯の犯罪事実の摘示では、


「どのような注意義務が要求されるかという法的判断の基礎となる行為当時の具体的事情を的確にとらえて簡潔に摘示しなければならない。これがなくては、注意義務の内容を確定することができない。」


とされます。『犯罪事実記載の実務』より
犯罪事実記載の実務刑法犯 5訂版



過失は、注意義務があって、これに違反したことを責められるものです。そのためには、注意義務の前提になる事情を明らかにしないといけません。

食中毒事件で過失責任を問う場合には、食中毒の原因となった菌の特定や汚染経路がどうだったのかを示して、被告人が注意していれば避けられたと認定してもらう必要があります。

これらの特定のために時間がかかることも多いです。

仙台のサルモネラ事件では、発生が昭和43年、最初の地裁判決の事件番号が45年についていますから、起訴まで2年程度の時間がかかっています。
大阪地方裁判所昭和50年2月28日判決でも同様に2年程度の時間がかかっています。




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2011/10/26(Wed) | 刑事事件 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
取立が違法になる場合
弁護士石井琢磨です。

権利があってもそれを使うことが許されない場合があります。

人にお金を貸しているからといって、「返せ」と請求することが恐喝罪など犯罪になることもあります。
違法な取立になると、逆に損害賠償請求をされてしまう。

請求側はいつ加害者になってもおかしくないのです。


取立の際に許されない行為をいくつか挙げておきます。


●玄関への貼り紙

最近では、家賃の取立の際に違法行為と認定されることが多い態様です。昔から借金の取立の際には使われていた方法で違法とされていました。


「正当な貸金債権の回収をはかる目的でしたものとはいえ、右認定した事実によれば、原告方玄関先の道路は、市営住宅に居住する多数の者が通行するところであるから、右貼紙をすることは、原告とその家族の正当に保護されるべき平穏な生活を不法に侵害するものであり、債権回収の方法として許されるベき範囲を逸脱した違法な行為」
新潟地方裁判所昭和57年7月29日判決




●借金を強制、暴力

取立の際に暴力を振るえばもちろん犯罪になります。「サラ金から借りて返せよ」という要求も危険。

「本件取立行為は、貸金の回収目的でしたものとはいえ、夜間控訴人を、その意に反してその自宅より連れ出し、控訴人にとり初対面の第三者に対し、借金の申し込みをさせて控訴人の名誉を侵害し、暴行を加えることにより不法に身体に危害を加えたものであって、債権回収行為として社会通念上許されるべき範囲を逸脱した違法な行為である」
大阪高等裁判所平成11年10月26日判決




●第三者に払わせる

法律上支払義務がない人に対して、支払を強制することはできません。成人がお金を返さない場合に「親に返させたいんですが」という相談を受けることがありますが、家族でも別人に対する請求は難しい。法人と個人も別です。法人名義の税金滞納について、個人資産に対して滞納処分をしたことが違法とされた裁判例もあります。

「同社の業務活動と原告の活動との混同の反復継続や有限会社法の組織規範の無視等を窺わせる証拠もないことからすると,一般論として有限会社の滞納関税について,その代表取締役と会社を同一視して代表取締役固有の財産に滞納処分をなしうる余地があるとしても,本件における上記の具体的な事実関係にかんがみると,実質的に原告1人がその業務全般を統括しているとの事実のみをもってAの法人格が形骸化しているということは到底できず,また,本件全証拠によっても原告が違法不当な目的のため会社法人格を濫用したとも認められないから,同社の本件滞納関税等に係る滞納処分として原告固有の財産である本件定期預金債権等を差し押さえることは許されないことが明らかである。」
神戸地方裁判所平成21年4月8日判決




●権利自体が違法

権利自体が存在しないとか、違法な場合には請求が許されません。架空請求と同じく違法になります。ヤミ金の請求も違法です。請求された側が自殺でもしてしまった場合には、その責任まで負わされる可能性があります。


「被告らの恐喝行為は,近隣住民をも巻き込み,収入はすべて奪われ,住む場所も失うとの恐怖を顧客に与え,顧客を精神的に追いつめていく過酷な行為であり,通常人であれば,上記恐喝行為から逃れる手段は死のみであると思うこともやむを得ないものであったというべきであり,Cらも同様に考えたことは容易に推認することができる。」
大阪地方裁判所平成21年1月30日判決



行き過ぎた権利行使に気をつけてください。




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2011/10/23(Sun) | 法律情報 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
日本年金機構の取立
弁護士石井琢磨です。

社会保険料等を滞納している中小企業に対して、日本年金機構が厳しい取立をしています。

売掛金の差し押えや入金日を狙ってのメインバンク口座を差し押えるなど。

もちろん、このような回収方法は、一般の債権回収の際にも使う方法ですし、社会保険料滞納も誉められたものではありません。
ただ、このような差し押えは、取引や事業の停止につながる可能性もあります。

社会保険料は、従業員の雇用を前提として継続的に発生するもの。
雇用が止まれば、その後の社会保険料は発生しなくなります。

はたして企業の息の根を止める差し押えをしてしまって良いのでしょうか。

私の相談者だけではなく、ネット上にも取立の対応が以前と変わったという叫び声が上がっています。

この制度は、目先の数字だけ見ていても仕方がないものですよね。

社会保険料を甘く見ている経営者の方は、取立の厳しさを頭に入れておいてください。






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2011/10/19(Wed) | 法律相談 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
『ショック・ドクトリン』に学ぶパニック時に生き延びる考え方
弁護士石井琢磨です。

本の紹介です。
読後感がよくない(怖い)のですが、読んでおいて良かった、とここまで感じる本はなかなかありません。

本屋で目立つ装丁の『ショック・ドクトリン』という本。


ショック・ドクトリン〈上〉――惨事便乗型資本主義の正体を暴くショック・ドクトリン〈下〉――惨事便乗型資本主義の正体を暴く




何の本かというと、生き延びるための本でございます。


恐怖に打ちのめされた拘束者が同志の名前を明かしたり信念を放棄したりするのと同じく、ショックに打ちのめされた社会もまた、本来ならしっかり守ったはずの権利を手放してしまうことが往々にしてある。



これでもか、というほど拷問について詳細な記載がされ、人間は打ちのめされると、外部からの攻撃に弱くなる生物であることが明らかにされます。

ショックに打ちのめされた「社会」と記述されているように、個人レベルではなく、社会がショックを受けた際に受けやすい攻撃について書かれています。

ハリケーン、津波、ハイパーインフレ。

異常事態が発生した際に、人々が気づかない間に何が行われるのか、海外の事例を豊富に紹介。

たとえば



津波を好機として活用したという点では、モルディブの右に出る国はない。被災国のなかでの注目度はもっとも小さかったと思われるモルディブだが、政府は沿岸部から貧しい住民を追放するだけでは満足せず、津波を理由にして居住に適した地域の大部分から国民を締め出すという策に出た。





3.11の震災後も便乗した悪質商法が出ました。

異常事態では個人レベルでも被害を受けやすいですが、人は集団行動をしていると安心しやすいため、集団全体が騙されてしまう危険もあります。


では、騙されないためにはどうすれば良いのか。



予測することです。

異常事態発生時や混乱時には攻撃が来ると知っておくことです。


集団で予測ができれば被害は防げるでしょう。

タイでも政治家はご多分に漏れず、津波災害を口実に漁民を立ち退かせ、大手リゾート企業に土地を売り渡そうとした。しかしタイのケースが他と違うのは、被災者たちが政府の口約束を信用せず、避難所でおとなしく公的な復興計画を待つのを拒んだことだった。津波から数週間のうちに何千人という漁民が結集し、「再侵入」と称する行動に出た。




そのためには、一人でも多くの人が、この本を読んでおく、考えを知っておく必要があるでしょう。

震災が起きた後だから、もう自分たちに関係がない、と考えるのは危険です。

自然災害もあるでしょうし、それ以外にハイパーインフレなど経済的混乱も今後あり得る話です。


その日が来たとき、ショック・ドクトリンを思い出せるようにしておきましょう、みんなが知っていれば強くなれます。


大きなショックを体験した者は誰しも、とてつもない無力感に襲われる。この無力感から立ち直る何よりの方法は、助けること-皆で力を合わせて再生のために汗することだ。





そこらへんのホラーものより怖いです。


ショック・ドクトリン〈上〉――惨事便乗型資本主義の正体を暴くショック・ドクトリン〈下〉――惨事便乗型資本主義の正体を暴く


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2011/10/14(Fri) | | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
『神様の女房』に学ぶ貯金方法
弁護士石井琢磨です。

多重債務の相談がなかなか減りません。

その原因の一つは、収入ではなく、支出に着目する空気ができていたことにあります。

消費者金融など、借金を簡単にできるという空気。

この空気のなかで、人は、収入の中で支出するという原則を、厳密に守らなくてもよくなりました。
収入が不足すれば借金で補える。

その結果、支出に着目した生活を送ってしまいました。

とりあえず車を買う、外食する、子どもに習い事をさせる・・・。

ときには借金で補っていた収入が、まるで自分の収入のように錯覚してしまい、借金の返済よりも支出に着目し続ける生活を送ってしまうのです。

そうすると多重債務に陥る。

これを避けるためにも、収入を見直す必要があります。

最近の家計本でも、収入からまず必要支出を差し引いて、残りで生活するという方法が提案されています。

これは、昔から使われていた方法でした。

最近NHKでドラマ化された『神様の女房』には次のような記述があります。


家計を守っていく上で、一番大切なことは、収入第一にすることです。
支出は収入があってこその支出。
収入より支出が超さないことが原則です。
そのためには、先に必要なお金は抜いて分けて、先に払ってしまう。
それで残ったお金を貯金するんです。そうしないと貯金はできない。



神様の女房
神様の女房




「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助氏の奥様ですら、新婚時代には、収入に着目して生活をしていたのです。
支出が増えがちな方は、一度、神様一家の真似してみてはいかがでしょうか。


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2011/10/12(Wed) | 借金問題 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
11年目弁護士が思わずタイトル買いした雑誌
弁護士石井琢磨です。

弁護士11年目に入った私が思わずタイトル買いしてしまった雑誌。

ZAITEN (財界展望) 2011年 11月号 [雑誌]
ZAITEN (財界展望) 2011年 11月号 [雑誌]






「ZAITEN」の弁護士「若手の逆襲」特集です。

先日行われた修習10周年のパーティーでは、元教官から
「普通は10年で一人前だが、弁護士は定年がないから、お前らまだまだヒヨっこだ」
という趣旨のお話がありました(たぶん)。

じゃあ、私は逆襲する側か、と思って特集を読んでみました。


弁護士の若手特集というのは、たいてい、弁護士増員による就職難の話。
今回の特集では、ロースクール制度になった新司法試験組を旧司法試験組の高齢弁護士がバカにするのに対して、若手世代が多数派を占めていくのだから会長選挙にも影響力を持つんだぜ、という内容でした。

旧試験と新試験の対立という構造は、みみっちい枠組みですね。

新か旧かで多少の差はあるかもしれませんが、そんなもの簡単にひっくり返せますよ。

弁護士になった後にどの程度成長したか、これからどれだけ成長するかが大事。

弁護士の能力は、試験が決めるものでない。依頼者が決めるものだ。

だから能力の構成要素は多様。法律知識だけでも、人の話を聞く力だけでも、マーケティングだけでも不十分で、一生不十分なのでしょう。そんな感想を持ちながら特集を読んでいくと面白い話がありましたので引用します。


今、企業から引っ張りだこの弁護士は、基本的に「できるかもしれない」ことをある程度のリスクを取って意見書にしている。




リスクを取る。

じつは、自分の登録直後と今を比べて、いちばん変わったと感じるのが、この点でした。

リスクを取った回答をしているか。

私が弁護士になった頃、偉そうな高齢の弁護士先生から言われたことがあります。


「私は、依頼人を安心させるんだ。結果を保証するように言う。そして、それを実現する」


最近になって、事件によって、リスクをとった発言をできるようになりました。
そして、それこそが依頼者から求められていることだと実感しています。

実現できる力を身につけ続けたいと思います。




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2011/10/08(Sat) | | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
日経ビジネスアソシエの「超実践読書術」
弁護士石井琢磨です。


日経ビジネスアソシエの「超実践読書術」特集を読みました。


日経ビジネス Associe (アソシエ) 2011年 10/4号 [雑誌]
日経ビジネス Associe (アソシエ) 2011年 10/4号 [雑誌]




最近、本屋で名指しコーナーができつつある千田琢哉さんが取材されていました。

千田さんは本棚にお気に入りの本を1000冊所蔵し、毎日50冊に触れるそう。ケタが違いますね。

読書の秋。
本を読むためには、そこに本がないといけません。

当たり前のことですが、機会がなければ人は動かない。動けない。


これは多くのことに当てはまります。
警察庁から公表されている統計によると、犯罪にも曜日によって起こりやすいものとそうでないものがあります。

平日と比べて、土日は空き巣や詐欺事件が減ります。

窃盗統計



(警察庁 平成21年の犯罪より)

これに対して、傷害事件のような粗暴犯事件は土日に増えます。

空き巣は、留守の家を狙うもの、詐欺は1人の時を狙うもの。人が集まる週末には起こりにくいと推測できます。

そこに機会があるから事件が起きるのです。


何かを続けようと考える場合には、そこに触れる機会をうまく作れば良いことがわかりますね。

良い習慣を作りたい人は、ぜひ試してみて下さい。



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2011/10/03(Mon) | 雑談 | トラックバック(0) | コメント(3) | page top↑
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