最後の裁判員裁判
弁護士石井琢磨です。

数日間かかりきりになっていた裁判員裁判が終わりました。
一つの仕事に集中するのって気持ちいいですね。
終わった後のToDoリストの山さえなければ。

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今回も、判決結果と、関係者の人生に与えた影響に満足できました。
裁判員裁判でなければこの結果はなかったんじゃないかと感じています。

ただ、私が裁判員裁判を担当するのはたぶん最後


刑事事件を受けるルートには、2種類あります。
私選と国選。

私選は直接、加害者や家族と契約して活動します。
うちの事務所では、通常の刑事事件では私選依頼もありますが、裁判員裁判は今までに1件もありません。

また、何件か裁判員裁判を担当してみて、どんなに効率よく進めても、活動時間(拘束時間)は100時間は超えてしまうので、私選であれば、それなりの費用を請求せざるを得ません。複数の弁護士をつけるなら尚更です。

そうすると、多くの人は「国選でいいか」となるでしょう。

そのため、たぶん今後、私選での裁判員裁判はない。


だとすると、残されたルートは国選。
裁判員裁判の国選は、神奈川県では、独自の名簿が作られています。
弁護士会が取りまとめて、法テラスが事件分配をしています。

横浜弁護士会ではこの名簿登録の要件として、昨年、研修を受けることが義務づけられました
必要なインプット自体はすべきかと思いますが、その研修の受け方がDVDやネットではダメで、横浜とか小田原に行かないといけないという内容でした。
私は、ただでさえ負担感のある国選事件を、少なくとも往復1時間半かけて、必要かどうか分からない研修を受ける気はさらさらなく、これを受けなかったので、名簿から抹消されることとなりました

裁判員裁判が始まった頃は、人数が足りないから義務だという流れで担当していたのですが、研修義務づけを決める際に担当人数は足りているという趣旨の話もあったので、ここで卒業です。

裁判員裁判は、個人的経験からすれば、意義がある制度だと思いますが、市民の反応(呼び出しに対する出席率など)を見ていると、持続できるのか疑問もあります。

弁護士会のルールが「研修はスマホでもOK」と変わるよりも、裁判員裁判制度が持続できなくなる方が早いだろうとの見通しから、今回のが、たぶん最後だと予測しています。


この裁判員裁判、弁護士という立場だと、毎回、消化不良に感じるところがあります。

それはやはり、密室での評議内容。

あの証人はどういう評価をされたのか、あの証言は?
フィードバックがないまま判決となるので、結果が良くてもモヤモヤ感が残ります。

私は、他人のメールを覗いたり、ストーキングしたり、部下の電話内容を盗聴したいなんて欲望は全くない無関心人間なのですが、この評議室でのやりとりだけは気になります。

今回も、ドローンを評議室内に飛ばして盗撮したい気分でした。
もちろん大人なのでガマンしましたが。

裁判員経験者の感想を述べる会とかあるんですけど、やっぱり自分の事件でどういう評議だったのかは気になりますね。


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2015/06/11(Thu) | 刑事事件 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
勾留決定に対する準抗告
弁護士石井琢磨です。

準抗告



勾留決定への準抗告が通ったので、報告しておきます。
要は、刑事事件で、早い段階で釈放されたということ。

逮捕の後に来る勾留。

勾留


たいていは10日間の勾留が認められ、かつ、10日間の延長もあり得ます。

検察官が請求して、裁判官が勾留決定をします。

勾留は、ざっくり言うと
・住所不定
・証拠隠滅しそう
・逃げそう
という場合に認められます(刑事訴訟法60条)。

ただ、私が弁護士になった十何年前は、逮捕されると、ほぼ自動的にと感じるくらい10日間の勾留がされていました。


ほとんどの事件で、「証拠隠滅しそう」とか「逃げそう」とか、認めちゃうわけですね。
こんなの、どうとでも言えますからね。

もちろん犯罪は許されませんが、身柄拘束が長くなることで社会復帰ができなくなることも多いです。
刑法が予定している罰則以外に、そこまでの社会的制裁を与える必要があるのでしょうか。
刑事弁護の活動をしている弁護士たちはそんな声を上げていました。


最近になって、検察官が請求しても、勾留しないという決定がニュースで目立つようになっていました。

検察統計によると、
2006年が
勾留許可13万6113件
勾留却下572件

であったのに対し、

2013年は、
勾留許可が10万9686件、
勾留却下1790件

となっています。
http://www.moj.go.jp/housei/toukei/toukei_ichiran_kensatsu.html


世の中の流れで、簡単に身柄拘束するのは止めようという空気が出てきたのです。

流れ



たぶん、今回の準抗告もそんな流れで認められたものです(個別の特殊事情はありますが)。


勾留の決定が出されてしまった場合の対策は、
・勾留取消
・準抗告
があり、これらに役立つ可能性があるものに、勾留理由開示があります。

ただ、決定が出てから準抗告などで動き、判断してもらうには、やはり時間がかかってしまいます

勾留の準抗告が認められるようなケースでは、そもそも、逮捕された直後、勾留の決定がされる前に、裁判官に働きかけて、事情を伝えて、最初から勾留請求を却下してもらう方が断然よいでしょう。

勾留


そうすれば、逮捕されただけの2,3日で釈放されます。
仕事にも戻りやすくなります。


今回のケースでも、おそらく、準抗告で伝えた内容を、勾留前に裁判官にアピールしていれば、そもそも勾留決定がされなかったでしょう



ここで大事なのが、家族の反応です。

今回のケースでは、家族は「逮捕だけで釈放されるだろう」と考えてしまいました。
ところが、予想外に勾留されたので、あわてて弁護士に相談したという流れでした。

準抗告が通ったので10日の拘束はされませんでしたが、逮捕段階で動いていれば・・・と悔やまれます。

刑事事件では、家族の最初の反応が大事です。


反応と言えば、軽そうに見えるこちらの本ですが、

めんどうな人を サラリとかわし テキトーにつき合う 55の方法
めんどうな人を サラリとかわし テキトーにつき合う 55の方法


反応をテーマにした本です。

人は、ついラクな反応(動かなくても釈放されるだろう)をしてしまいます。
しかし、それを打ち破ることで、未来を変えることができるのです。

まずい反応をしてしまった、と後悔しているそこのアナタは、これからの人生で、もっと大きな後悔をしないためにも、読んでおいてください。



めんどうな人を サラリとかわし テキトーにつき合う 55の方法
めんどうな人を サラリとかわし テキトーにつき合う 55の方法


2015/02/04(Wed) | 刑事事件 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
強姦事件で被害者に証拠ビデオの話を出す件
弁護士石井琢磨です。

宮崎強姦事件が頭の中をグルグル回っています。

<宮崎強姦ビデオ>被害女性が手記「人生終わった恐怖」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150121-00000089-mai-soci

宮崎強姦ビデオ:被害女性が公表した手記全文
http://mainichi.jp/feature/news/20150121mog00m040008000c.html


ざっとニュースを見たくらいで、私の認識している事実は、
・強姦罪で起訴されている
・加害者側が、性行為時のビデオを持っている
・無罪主張している
・加害者側が、被害者側にビデオがある旨を伝えた
・被害者側弁護士はその際、「無罪の決定的証拠であるビデオを法廷で上映することになるが、被害者はそれでもいいと考えているのか」と言われたと発言。
・この発言は、被害者側弁護士を通じて、被害者本人に伝えられた
・その際に、提示された示談金はゼロ
・被害者は、ビデオを知らされたとき「自分の人生が終わったような恐怖を覚えました」と手記で述べている。
・このビデオは実際に証拠提出されて法廷で流れた
あたり。

そして、ネット上での反応を見ると、9割以上が、加害者側弁護士を、ひどい奴だ、共犯だ、懲戒だと叩く発言をしています。


性犯罪の刑事弁護をすることもかなりある立場からすると、
同じことをするかもしれない
というのが私の感想でした。

このビデオを、証拠提出したのは検察なのか弁護側なのか記事からは不明(弁護士が捜査側に提出したと書かれています)ですが、被害者が「これのどこが無罪の証拠なのか」と言い、加害者側弁護士が「無罪の決定的証拠」と話したことからすると、解釈の余地がある証拠だったのではないでしょうか。

被害者はまったく無罪とは思えない証拠と解釈。
加害者は無罪の証拠と解釈。

こういう証拠があり、かつ、それを示談交渉に使わなければならない場合には、相手方に選択肢として提示することは、加害者側の弁護士としては、しなければならないことだと考えます。
被害者はそれを選択肢として感じないかもしれない。でも、考えるかもしれない。

その際に、無罪主張だとしても、多少の示談金は準備したいところですが、加害者本人がお金を持っていなかったり、家族から見放されていて、誰からも援助してもらえないようなケースでは、示談金の準備ができない、ゼロ提示しかできない、ということもあります。

ホントに申し訳ないような提案しかできないケースも現実には多いのです。


もちろん、被害者への言い方はありますよ。
意味もなく被害者を傷つける二次被害を発生させるのは問題外。

ただ、今回のケース、被害者側弁護士を挟んでいるんですよね。

加害者側弁護士-被害者本人
というやり取りならば、言葉に気をつけて、気を使いながら脅しにならないように、提案するでしょう。

でも、
加害者側弁護士-被害者側弁護士-被害者本人
と間に挟むなら、そこまで気を使わないかも。

「先生、ホントにこんな提案しかできなくて申し訳ないんだけど、ご本人の意向をもう一回確認してみてくださいよ」

被害者側弁護士の伝え方によっては、被害者本人が「脅された」と解釈する可能性はあります。

私が前提にしている事実が違ったり、明らかに脅迫があれば別ですが、加害者側弁護士が責められすぎな感があるので、気になりました。

間に人を挟めば挟むほど、解釈されて、伝わりにくくなるんですよね。
まあ、弁護士って、間に挟まる仕事なわけなんだけど。


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2015/01/22(Thu) | 刑事事件 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
家族とのつながりを断つ面会禁止について
弁護士石井琢磨です。

年末年始ということもあり、家族と一緒に過ごしている人も多いのではないでしょうか。

急に、家族と連絡を取れなくなったらどう感じるでしょう。


そんなことを考えています。


PC遠隔操作事件について、ジャーナリストの江上紹子さんの記事を読んだからです。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/egawashoko/20131222-00030897/

もう起訴されて、公判前整理手続も進んでいる最中ですが、全面的に面会禁止が続いているらしいです。
家族とも面会できない状態とのこと。


裁判官が、逮捕後の勾留を決定する際、面会を禁止する決定を併せてすることがあります。

この決定がされると、弁護士以外とは会えないのです。

面会を禁止する理由は、逮捕された人と、他人とを会わせてしまうと、「あの証拠を隠してくれ」「捨ててくれ」などというやりとりがされてしまうから。
そのため、共犯者がいる事件や、犯行を否認している事件では、面会が禁止されやすいです。

ただ、弁護士以外との面会では、立会人が会話内容などをメモするので、事実上、事件のことはあまり話せませんし、「隠してくれ」などと伝えるのは難しいです。


禁止理由は、説得力があまりない。


むしろ、誰とも会わせないというのは、逮捕された人と外部とのつながりを断ち、精神的に追いつめ、警察や検察の言うことをきかせやすくするためであると、弁護士業界からは批判されています。

さらに、つながりを断たれて苦しむのは、本人だけではありません。


家族も苦しむことが多いです


『もしも遠隔操作で家族が犯罪者に仕立てられたら ~ネットが生み出すあたらしい冤罪の物語』
もしも遠隔操作で家族が犯罪者に仕立てられたら ~ネットが生み出すあたらしい冤罪の物語


という本では、逮捕者の家族側の視点で、つながりが断ち切られることの苦痛が描かれています。

「警察は、本人、家族、そして弁護士にも、ほとんどなにも教えてくれない。」

ため、家族には、情報が入ってこない。本人の言い分もわからない。


本の中では、そのような家族の苦しみに警察がつけ込む内容も描かれていますので、ぜひチェックしてみてください。


で、私たち弁護士は、そのような本人と家族の苦しみを減らすため、面会禁止という決定がされた場合、面会を認めてもらえるよう働きかけます。

刑事弁護の本に書かれている内容では、

1 勾留の決定前に、裁判官に働きかける
2 準抗告をする
3 特別抗告をする
4 解除請求をする


という方法です。

新版 刑事弁護
新版 刑事弁護



江上さんの記事では、4の解除請求をして、裁判官に家族とだけは会わせてあげて、と働きかけたのに、認めてくれないため、2の準抗告をしたものの、裁判官からはこれも否定された、と書かれています。

刑事訴訟法には、「勾留に関する裁判」に対しては、不服申立ができると明記されているものの、面会禁止決定に対する不服申立ができるという明記はありません。
刑事弁護の本に書かれた方法は、「勾留に関する裁判」という法律の条項の解釈として、面会禁止決定も含めることを前提にしたものでしょう。


マスコミが見向きもしない刑事事件ばかりやっている私の感覚では、家族との面会くらいは、起訴前でも認められることが多いです。起訴後は捜査が終わっているのですから、証拠隠滅という恐れはないはずで、より認められやすいはずです。


遠隔操作事件が本のように冤罪かどうかはわかりませんが、有罪か無罪かという点と、第三者との面会を認めるかどうかは別問題です。

処罰は有罪判決が確定してからすべきものです。

家族との面会を禁止することは、逮捕されている本人の精神状態を狂わすこともあります。

弁護士が毎日会いに行っても、支えられずに、事実と違う供述調書に署名してしまう人はいるのです。

あの憔悴しきった表情を見ると、今後の人生に悪い影響があるとしか思えないのです。



外部との関わりを断ち切られた人の憔悴度について説明するために、一つの制度を紹介します。

遠隔操作事件でも使われた勾留理由開示という制度です。


これは本来、法廷で勾留の理由や証拠を明らかにする制度ですが、その点ではあまり機能していません。

ただ、この申立をすると、逮捕された人が、裁判所の法廷に行けます。

内容を家族が傍聴できたりします。

すると、家族の姿を一目、見ることができるのです。

これが、逮捕された人にとって、リフレッシュになったりします。

その目的で使うのもアリだと、刑事弁護の本に書かれていたりもするのです。



いいですか。


一目、顔を見るだけで、心が安らぐ。

という精神状態になっているのです。

逮捕され、外部との関わりを断たれた人は。


そんな人が何十日、何百日と家族とも会えない日々を送る。

この苦痛を正当化できるのでしょうか。



家族とつながっているときにこそ、考えてほしい問題です。


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もしも遠隔操作で家族が犯罪者に仕立てられたら ~ネットが生み出すあたらしい冤罪の物語
もしも遠隔操作で家族が犯罪者に仕立てられたら ~ネットが生み出すあたらしい冤罪の物語一田 和樹

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2013/12/31(Tue) | 刑事事件 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
横領・着服は昔からある習性
弁護士石井琢磨です。

横領についての相談もよく受けます。

経理担当の従業員。
マンションの管理組合の会計担当や理事長。
最近、報道が増えているのが、成年後見人。

どの人たちも、他人のお金を持っていると、使いたくなっちゃうのです。

これは、人間の習性です。

昔からある問題
です。


『武士に「もの言う」百姓たち』という本を読みました。

武士に「もの言う」百姓たち: 裁判でよむ江戸時代
武士に「もの言う」百姓たち: 裁判でよむ江戸時代




江戸時代の裁判を描いた本です。
百姓は、武士に逆らえないというイメージがありますが、実はしっかり権利主張をしていたそうです。

前半は、江戸時代の紛争全般。国境争いが多かったそうです。
後半が、具体的な事件を取り上げて、一つの裁判を追っていく話。

その話が、村の財政運営に不正があったという責任追及から始まるトラブルです。

このような不正が追及される裁判が起こされていたことから、当時から会計に関する不正問題、横領などがあったことが予想できます。


「横領されない、大丈夫」と一人の人間を信じるのは危険です。


一定の確率で横領されるものと考えて、それを前提にシステムを作るべきです。

監督機能、権限の分散ですね。

横領は、金額が大きくなることが多く、財産の主体に致命的な損害を与える傾向にあります。

効率は悪くなるかもしれませんが、横領が発生する確率を下げるシステムを作らないと危険なのです。


先日、事務所の過払い金事件で、100万円単位の現金を依頼者にお渡しする機会がありました。
うちの事務所では、事件終了時に、1円単位でつけた実費明細書を渡しています。

過払い金実費



この依頼者は、実費計算書を数分間ジーッと見てチェックしていました。

なにか間違いでもあったのかとドキドキしましたが、こういう態度は頼もしい。


自分が一度信用して頼んだ弁護士でも疑ってチェックする。


100万円単位の過払い金があるということは、消費者金融の高い利息はチェックせずに人生を送ってきたわけですが、今回の行動を見て、ちょっとだけ安心しました。

みなさんも、お金に関することを誰かに任せる際には、チェック機能を働かせるようにしてください


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2013/10/14(Mon) | 刑事事件 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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