循環取引(契約書があっても架空)
弁護士石井琢磨です。

前回、法人のチェック機能のお話をした際、

企業不祥事の原因と対応策
弁護士が分析する企業不祥事の原因と対応策



という書籍を紹介しました。

※参考記事 『溶ける』のチェックシステム


『溶ける』の話は、資金移動自体は会計上も明記されていたという話でした。

しかし、企業不祥事の中には、会計上の記載が正しくないケースが多数あります。

たとえば、循環取引という手法。
これは、複数の企業を使い、商品販売やサービス提供を帳簿上繰り返すことで、架空の売上を計上する手法です。
関係会社の間で、取引をグルグル回して、全社売上が伸びたと見せかけるような手法。

その形態には色々ありますが、なぜこのような取引が起きてしまうのか。

循環取引の実務対応
循環取引の実務対応―予防・発見から法的紛争処理まで


という本があります。

循環取引の原因としては

・特定の取締役に権限が集中、取締役会や監査役等による監視機能が機能しない
・従業員レベルでも兼務すべきでない職務を同一人が兼務しているため、相互監視が働かない
・株価を気にしすぎ、売上を上げようとする

という点が紹介されています。


このような循環取引では、たいていは契約書類は整備され、会計記録、在庫などの記録も徹底して偽装されます。

見かけ上は、ちゃんとした取引があったかのように見せかけられているのです。


さらに、循環取引では、関係会社で話を合わせているので、通常の取引ではあり得ないような取引条件になっていたりします。

本の中で紹介されているものを一部紹介しましょう。

・手数料が通常の取引よりも著しく高い、あるいは低い
・支払いサイトでリスクを負わない条件となっている
・一方当事者に著しく有利な特約がある
・契約を締結する前に、最終需要者に対して目的物が納入済み
・時系列が不自然に前後している
・目的物である商品・サービスに関する記載が脱落したり、大ざっぱな記載となっている
・当事者間で商品についての説明が行われない
・大量の取引が行われているのに商品クレームが一度も生じていない
・業務やサービスの進捗状況を客観的に測定することが困難な取引(ソフトウェア開発等)


このような会社に第三者として関わる場合には、契約書類があったり、会計上の記載があったとしても、疑いの目を持つことが必要なのです。


循環取引の実務対応―予防・発見から法的紛争処理まで
循環取引の実務対応―予防・発見から法的紛争処理まで遠藤 元一

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2013/12/26(Thu) | 民事訴訟 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
従業員引き抜きの損害賠償額
弁護士石井琢磨です。

上場企業の役員による不正のニュースが報道されたからなのか、最近、会社役員の不正について問い合わせを受けることが増えてきました。

取締役は、会社に対して善管注意義務や忠実義務を負っています。
これらの義務は、法律上は抽象的な書き方しかされていません。

たとえば忠実義務は以下の規定。
会社法355条 「取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。」

そのため、実際にどのような行為がNGなのか、事例を見ていき、取締役の人としては違反しないよう、会社としては違反させないよう注意しないといけません。

義務に反する行為をしてしまった場合、損害賠償の責任まで生じることもあります。


ありがちな事例として、取締役が退任後に別会社を立ち上げ、以前の会社から従業員を引き抜くような行為。

「引き抜き」という事実を認定するのは結構大変なのですが、ここがクリアできると損害賠償責任に進みます。

裁判例のなかには、引き抜きを認めたうえで、新しい従業員の募集広告費用、機会喪失損害のほか営業損害4000万円を認めた例があります(東京高裁平成16年6月24日判決)。
この例では、営業損害として主張された額(約2億8000万)のうち、どの範囲が引き抜きによって生じたものか不明であるとしながら、諸般の事情からの推定としてざっくり4000万円と認定しています。」


ビジネスを加速させると行き過ぎた行為に及んでしまうことがあります。
ときどきふり返ることも大事です。

2012/01/23(Mon) | 民事訴訟 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
支店を特定しない預金口座の差し押えに対する最高裁決定
弁護士石井琢磨です。

預金口座の差押えについて最高裁判所が一つの判断をしました。

平成23年9月20日決定
http://kanz.jp/hanrei/detail/81634/


一般的に、預金口座を差し押さえる際には、「○○銀行○○支店」の預金口座、というように支店を特定して申立てる方法がとられていました。

しかし、金銭請求をする相手方が、どこの支店に口座を開設しているかは分かりにくいものです。
そのため、支店を特定せずに差押えの申立をする方法をとることもありました。
「○○銀行の預金全部」を差し押さえる、というようなものです。

この方法をとっても、銀行は、他支店の口座情報も集約できるために不都合はないでしょう。
これが認められれば、差押えを申立てる側、すなわち金銭を回収する側、お金を取り戻す側にとっては有利な話です。
実際、このように支店を特定しない差押えを認める高等裁判所も出ていました。

しかし、今回の最高裁の判断はこれを否定したものです。


債権回収や被害金の取り戻しをする側に立つことが多い私としては、残念な判断です。

民事執行法で、一定の条件を満たせば、財産開示という手続で「どこに財産があるのか」開示させることが可能ではあります。
ただ、開示を拒絶しても大した制裁もないため、十分に機能していないのが実状です。

裁判で勝訴しても現金が回収できなければただの紙切れ。

今回の最高裁により、預金口座の差押えは支店が特定できないと機能しにくくなったため、より効果的な方法を考えていきたいと思います。


●決定抜粋


本件申立ては,大規模な金融機関である第三債務者らの全ての店舗を対象として順位付けをし,先順位の店舗の預貯金債権の額が差押債権額に満たないときは,順次予備的に後順位の店舗の預貯金債権を差押債権とする旨の差押えを求めるものであり,各第三債務者において,先順位の店舗の預貯金債権の全てについて,その存否及び先行の差押え又は仮差押えの有無,定期預金,普通預金等の種別,差押命令送達時点での残高等を調査して,差押えの効力が生ずる預貯金債権の総額を把握する作業が完了しない限り,後順位の店舗の預貯金債権に差押えの効力が生ず
るか否かが判明しないのであるから,本件申立てにおける差押債権の表示は,送達を受けた第三債務者において上記の程度に速やかに確実に差し押えられた債権を識別することができるものであるということはできない。そうすると,本件申立ては,差押債権の特定を欠き不適法というべきである。




2011/09/28(Wed) | 民事訴訟 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
ある損保会社での会話
先日、ある交通事故事件を解決できました。


裁判を起こしたことにより、裁判前に保険会社から呈示されていた金額の2倍以上の金額を得ることができたものです。

かなり重い後遺障害の方で、これからの生活もあるので、増額できてホッとしています。



なぜ保険会社は、その程度の金額しか呈示していなかったのでしょうか?



とある損保会社での会話。


部下「部長、相模川さんの案件、裁判になった結果、賠償金は7000万円だそうですよ」


上司「まあ、仕方ないだろう」


部下「裁判前にうちから提示した示談案は3000万円でしたよね」


上司「3000万円が安すぎるって言われて、弁護士の所に相談に行かれたんだよな」


部下「たしかに、裁判基準よりは安い金額でしたよね。もう少し高い金額を呈示しておけば良かったかもしれませんね」


上司「おいおい。それは無理だろう。誰にでも高い金額を呈示していたら、うちの会社はどうなる?自賠責とか任意保険の基準だけ出しておけばいいんだよ」


部下「でも、相模川さんの事件では、色々と争点がありましたよね。将来の治療費とか、介護費用とかは裁判例でもわかれていますからね。それらの項目はともかく、それ以外の慰謝料とかは裁判基準で、例えば4000万円での示談を呈示していたら、応じてくれたんじゃないですかね」


上司「結果論だな。慰謝料なんかは、裁判でも定額化してきている部分だから、本来は増額しなきゃ、ということもわかるが、とりあえず低い基準で呈示しておけばいいんだよ」


部下「どうしてですか?」


上司「それで解決できる事案がたくさんあるからだよ。裁判になっているのは一部だけだろ」


部下「低い基準で示談に応じてくれる人たちは、納得しているんですかね」


上司「世の中知らない方が良いことはたくさんあるんだよ。裁判基準を知らないなら、それでいいの。知らないで納得してるならそれでいいの」


部下「たしかに、早く解決した方が良いとも考えられますよね。一般的には」


上司「そうそう。事故にあった人は、怪我していて身体が弱っていたり、精神的に弱っている状態にあるんだから、早く示談してスッキリした方がいいんだよ」


部下「そうですね。我々のしていることは正しいんですね」



基準を知ったうえで、裁判になった場合の回収見込額を知ったうえで、納得して解決のスピードを優先するなら、それで良いと思います。

もちろん、呈示された内容が全て裁判基準より不利ということでもありません。
例えば、裁判では過失相殺がされるところ、事前の示談案では過失相殺をしない提案ということもあります。
その結果、裁判を起こしても賠償金があまり増えないということもあります。

これらを知ったうえで対応するなら良いと思います。


ただ、弱っている状態で、保険会社の話を鵜呑みにしてしまったり、立ち上がる気力がでないことを理由に、早くまとめてしまうのでは、後悔することになるかもしれません。


保険会社から示談金の呈示を受けた場合には、なるべく専門家に見てもらった方が良いですよ。



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2010/08/12(Thu) | 民事訴訟 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
判決の送付
借りたお金を返していないのですが、給料を差し押さえられてしまうのでしょうか?



不況の影響か、最近、非常によく受ける質問です。

普通にお金を借りて、返さなかったからといって、突然給料を差し押さえられるというわけではありません。



給料のような財産を差し押さえるには、公的な文書が必要になります。

ちゃんとお金を貸したという文書。



具体的には、裁判所の判決や裁判所での和解調書など。

あとは公証役場で作った公正証書。



差押え手続をする場合には、このような判決などの文書を、もう一度裁判所に提出する必要があります。

したがって、公正証書を作成していなければ、突然給料を差し押さえられるということはなく、通常は、まず裁判などを起こされることになります。この場合、裁判所からの呼び出し状や訴状が届きます。



もし、すでに裁判を起こされて判決が出されているなど、相手に公的な文書を取得されている場合には、財産を差し押さえられてもおかしくない状況です。





ちなみに、うちの事務所では、依頼を受けてお金を請求する裁判を起こし、判決が出た場合、原本については、お客さまに送りません

裁判所から出た判決や裁判所の和解調書、和解に代る決定など、裁判所のハンコが押してあるものは、相手が払わない場合に、財産の差し押さえ手続に使うからです。

お客さまに送ってしまってなくされると大変ですし、差押えをするときに、事務所でもう一度預かるというのも二度手間だからです。原則として、判決どおり回収できるまでは事務所で原本を保管しています。

もちろん、どのような内容の判決が出されたかは重要なことですので、お客さまにはコピーを送っています。判決どおりに回収できたら、その時点で原本も送ります。



このように、借りたお金を払わなかったとしても、突然差押えを受ける可能性は高くはありません。

ただし、法律上、お金を借りた人の財産が、裁判をしているとなくなってしまいそうな状況にある場合には、正式な裁判を起こす前でも、相当額の担保金を積んで、「仮に」差し押さえるという手続もあります。

現在のところ、クレジット会社や消費者金融がこの手続を使ってくるという話はあまり聞きませんが、お金を借りた相手が個人だったりすると、この手続が使われる危険はあります。



借りたものを返さないという状況を放置することは、望ましくありません。

最終的に差し押さえられると困るものがある場合には、返せないなりに対応をする必要があります。



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2009/12/14(Mon) | 民事訴訟 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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