『論理的思考力を鍛える33の思考実験』が論理的におかしいんじゃないか、という話
弁護士石井琢磨です。

『論理的思考力を鍛える33の思考実験』という本を読みました。
売れてるみたいですよ。

論理的思考力を鍛える33の思考実験
論理的思考力を鍛える33の思考実験北村 良子

彩図社 2017-04-27
売り上げランキング : 714


Amazonで詳しく見る
by G-Tools




有名なゲーム理論の話とか、モンティ・ホール問題など、考えさせられる話が盛り込まれている一冊です。


ただ、納得できない問題が一つ。

152ページに書かれているカードの問題です。引用します。

まずは次の問題を解いてみてください。
ここにA〜Fの6枚のカードがあります。カードには次の法則があります。

【法則】
・偶数が書かれたカードの裏には必ずハートの絵が描かれている。

さて、すべてのカードがこの法則に当てはまっているかを確かめるためには、少なくともどのカードをめくる必要がありますか。すべて答えてください。

思考実験




本の中で、正解はA,D,Eと紹介されています。

その理由として、
Aの「8」は、まずめくる必要がありますね。

D(●),E(◆)の理由としては、

「偶数が書かれたカードの裏には必ずハートの絵が描かれている」のですから、●の絵が描かれたカードの裏が偶数であった場合、偶数のカードの裏に●が描かれていることになるので条件に反します。


とのこと。

納得ですね。

引っかかりやすいBのハートマーク。

実際には、条件では「偶数が書かれたカードの裏には必ずハートの絵」と書いてあるだけで、「ハートが描かれたカードの裏には必ず偶数」とは書かれていません。奇数が書かれたカードの裏にハートが描かれていても、偶数の裏さえハートの絵ならば問題はないのです。



偶数→ハート
というのが唯一の法則です。

ハート→偶数
という訳ではないのですね。
ハート→奇数
でも良いので、ここはチェックする必要なし。

納得です。

そして、残る2枚のカード
C(5)とF(7)の奇数カードについて、本書の解説は、以下のようなものです。

5と7は奇数です。条件では、奇数については一切触れていません。条件に何も書かれていない以上、奇数の裏がハートであっても、その他の絵であっても構いませんので、検証の必要はありません。



本当にそうでしょうか?

この問題での、唯一の法則はこれです。

【法則】
・偶数が書かれたカードの裏には必ずハートの絵が描かれている。



この本の解説には、一つの前提があります。

1枚のカードには、数字とマークが裏表になっていること。


しかし、そんな前提はどこにも書いてありません。
勝手にそう思い込んでいるにすぎません。
いや、そう思い込ませる問題に違いない。

数字の裏が数字である可能性もあるのです。


5の裏面が、4だったらどうなります?

「・偶数が書かれたカードの裏には必ずハートの絵が描かれている。」という法則に反しますね。

だとすれば、奇数のカードも、裏が偶数でないのかどうかチェックしなければならないでしょう。


この問題は、間違いか、問題提示の際の説明不足ではないでしょうか。



この本の中での思考実験の多くは、論理の話です。

思い出しましょう。

論理には「疑う力」が必要です。疑うことで自分の論理が強化されるからです。
では何を疑えばいいのか、チェックすべきは次の二点です。
①「前提」を疑う
②「目的地」とのつながりを疑う


『プロ弁護士の「心理戦」で人を動かす35の方法』137ページより
プロ弁護士の「心理戦」で人を動かす35の方法




何を前提にするか、が大事なのです。

この話を、『思考実験』の本を見せながら、知り合いに図示して語ったところ、
「人狼ばっかりやってるから、そんなこと言うんだよ」
と呆れられました。

ふっ。


まあ、人狼は、論理ゲームなので、前提のチェックは厳しくしないといけないのは確かです。


実例で紹介しましょう。

先日、人狼ルームを経営している児玉健さんと人狼をする機会がありました。
14人村 人狼3,狂人1、予言者1、霊媒師1、ボディガード1、村人7

児玉さん:村人
私:人狼
人狼1




初日にいきなり人狼仲間が処刑される。
夜に1人が噛まれて、2日目が12人でスタートします。人狼残り2

1710052日目



ここで、予言者を出そうという話が出ます。
ゆーすけさんが、予言者だと主張。
すかさず、私も予言者だと嘘をつきます。
他には誰もいない。

予言者と主張する人が2人。
村人としては、私か、ゆーすけのどちらが、本物の予言者か、を予想するという流れになります。

1710052co




3日目、10人。人狼残り2

ここで、ゆーすけさんが、予言結果として、私の人狼仲間ヤマモトさんを占い、村人だったと伝えてきました。



1710053日目





私とヤマモトさんだけは気づきます。

ゆーすけ、偽物!
予言者は、2人とも偽物!
ゆーすけは、狂人で嘘をついているだけ。人狼の味方でした。

しかし、それを知っているのは人狼の私とヤマモトさんだけ。
ゆーすけさん自身も、私を本物の予言者だと思い、村人もどちらが本物か悩んでいる状態です。


4日目、8人。人狼残り2,狂人1。
私も、ゆーすけさんも児玉さんを占ったと主張。

私→児玉さん 人狼という結果
ゆーすけ→児玉さん 村人という結果

1710054日目



ここで、児玉さんは、自分が村人だと知っているので、予言者のうち、私を偽物だと確信できることになります。

人狼側は、ここで村人を処刑できると、翌日6人中、味方が3人になるので、パワープレイという手法で勝てます。
3日目の流れで、児玉さんが「自分を占え」と強く主張していたので、狂人のゆーすけさんが児玉さんを人狼と間違えて結果を出せば、児玉さんは村人なのに2人の予言者から人狼と言われる、という楽しそうな展開になります。

それで、ちょっとチャレンジとして狼という結果を出してみました。

しかし、予言結果は分かれたので、この日は、私か児玉さんのどちらを処刑するか、という話になり、決選投票の結果、私が処刑されてしまいます。


5日目、6人。人狼残り1,狂人1
ゆーすけさんが、他の村人を人狼だと主張し、その人が処刑。
児玉さんの説得もあり、村人目線では、ゆーすけさんが本物の予言者だという話になります。

1710055日目


6日目、4人。人狼残り1,狂人1
ゆーすけさんが、残った村人に人狼だと主張。
その人が処刑されて、夜に村人が噛まれ、人狼と村人の数が同じになったので、人狼の勝利。

1710056日目



なのですが、この最終日、児玉さんが、人狼ヤマモトさんを疑い始めていました
ゆーすけさんが、村人だと占っているヤマモトさんの投票行動を疑い始める。
児玉さんの目線からは、私は偽物であることは確定なので、人狼ヤマモトさんを疑うということは、それを村人だと言っているゆーすけさんも疑うことになります。

予言者が2人とも偽物。

ということは、初日の夜に噛まれた人が、本物の予言者・・・

171005推理




「2人のどちらかが本物の予言者」という前提を覆しに来たのはさすがです。

ホントに人狼が強い人って、そこまで追うんですよね・・・


長々と解説しましたが、論理的思考力で、何を前提にするかというのはとても大事なポイントになります。

みなさま、論理的思考力を使う際には、お気をつけください。

ご相談は相模川法律事務所ホームページへ

弁護士石井琢磨twitter









関連記事
2017/10/06(Fri) | | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
 ホームに戻る  次のページ